東洋思想で解く日本流の強さ
花王で多くのヒット商品を送り出し、代表取締役社長や会長を歴任した著者が、日本企業、中でも製造業における企業のあり方や人づくりの重要性を説いた本。米国流の短期的な経済合理性の追求が日本経済の低迷を招いたと分析。東洋医学や陰陽五行の思想を引用しながら、集団で力を発揮する日本流の強さとその根底に流れる人づくりをひも解いている。
著者は、個人が有機的に結合して総体として強さを発揮する「集団」から優秀な人材が生まれると述べる。教育制度で人を「育てる」のではなく、時間をかけてでも「人が育つ」のを待てる集団という、「環境」を整えることが重要というのだ。
同書を読んで、以前に花王を取材した際、人づくりに熱心で社員を大切にする企業だと感じたことを思い出した。人づくりだけでなく、ものづくりのあり方から働くことの意義までを考えさせられる1冊である。(吉田)