佐々木久臣氏●東京大学特任研究員、元いすゞ自動車専務取締役

 私は日本だけでなく、中国やアジアの多くの生産拠点を訪ねている。その中で最近感じるのは日本企業(海外子会社・合弁会社も含む)の工場において、品質に対する気の緩みが出てきている、ということだ。

 日本企業が生産する製品の品質は、多くの工場で現在でもレベルが高い。ところが、そのレベルをさらに向上させて完璧品質を目指すのか、あるいは品質は合格点なので効率を重視して生産性改善に軸足を移すのか、という2つの選択がある場合、後者を選ぶことが多い。新興国企業の追い上げが厳しい中、コスト削減につながる生産性を何とか高めたいというのが主な理由だ。