HCCIの開発がSKYACTIV誕生のきっかけ

マツダスカイアクティブエンジンの開発
監修:人見光夫、執筆:御堀直嗣
発行:三樹書房
価格:1800円+税
ISBN:978-4-89522-620-2
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 マツダの次世代技術「SKYACTIV」の中核をなすエンジン技術の開発責任者、人見光夫氏が監修した技術者向け書籍。同氏はエンジンの効率が、「圧縮比」「比熱比」「燃焼期間」「燃焼時期」「壁面熱伝達」「吸排気行程圧力差」「機械抵抗」という七つの因子で決まると主張する。これらを妥協することなく突き詰めたのがSKYACTIVである。

 しかし、その開発過程はユニークだ。最初に取り組んだのはHCCI(予混合圧縮着火)と呼ぶ、圧縮比を高めて点火プラグを使わずに自己着火させる将来技術だった。あまりに難しいため開発を諦めかけたとき、圧縮比は高いまま点火プラグで着火するというアイデアが浮かんだ。15という高い圧縮比ではノッキングが起こることが予想されたが、低温酸化反応のおかげでトルクは1割しか落ち込まないという結果を得て、同エンジンが誕生した。他社の技術者からマツダに「エンジン技術者が再び社内で働く場ができた」と感謝の電話があったというエピソードも紹介されている。