「工学の森」を俯瞰できる
大学の工学部の授業は、技術の詳細にこだわるあまり「木を見て森を見ず」になりがちだと指摘されることがある。そんな現状に危機感を抱いた2人の米大学教授らが「森全体を理解してもらえるように」とまとめたのが本書。構造物や製造工程などに関わる101の原理・原則や概念を端的に短く列記している。例えば、「正確度と精度は違う」「トレードオフは必ずある」「物質の4つの特徴」といったものだ。
この「端的に短く」というのがミソ。要素(木)1つひとつの説明は見開き2ページに収め、そのうち左ページはイラストのみという大胆な構成にした。こうすることで読者は、木の概要をパッと目で見て理解できる。さらに、1つの木の解説は長くて十数行程度とした。101の概要を短時間で読破できるため、森全体の姿をイメージしやすい。技術者にとっては当たり前の内容が多いかもしれないが、「工学の森」を俯瞰できる。(池松)
現場力を高める人材を育成
日本のものづくり現場を盛り上げ、元気づけ、引っ張っていく人材を育てる方法について解説する。具体的には、自ら成長し、向上心を持って改善に取り組み、心理学的な視点に立ってメンバーの気持ちを受け止めて理解するような人材だ。
筆者は日東電工において約20年間、生産技術部門の経験を積んだのち、自ら手を挙げて人事部門・教育部署へ異動したという経歴を持つ。定年退職するまでの約15年間、生産技術部門や製造部門などの職種別教育や新入社員研修などの階層別教育の企画運営を担当した。
その筆者がものづくり人材の育成方法について、長年の経験を生かして現場目線でまとめている。まず第1章でものづくり人材の条件について説明し、第2章以降で新人・若手、第3章で班長(現場の基礎環境をつくる人)、第4章で作業長(職場環境を整備する人)、第5章で製造課長(職場の改革を図る人)と、4つのレベルに分類して、それぞれの育成方法を解説する。(中山)