前回、マーケティングセンスを獲得する観点から、経営者の基本的な思考法として「SWOT分析」を学びました。ここから本格的なマーケティングの考え方を学んでいきますが、その前に、せっかくなのでSWOT分析をチーム内で活用してみましょう。このようなフレームワークは、学んですぐにアウトプットで実践活用した方が定着化しやすいのです。

初期段階のSWOT分析でバラバラな現状を自覚する

 今からお伝えする活用方法はSWOT分析の主たる使い方ではありませんが、実は我々コンサルタントがコンサルティングの初期段階で「ある気付き」を得る目的で実際に使うことがある手法でもあります。

 まず、あなたがまとめているチーム(部や課かもしれませんね)のメンバーに、少し大きめの付箋(せん)を配って下さい。ホワイトボードには、SWOT分析の4つの枠をあらかじめ書いておきます。SWOT分析について説明をした上で、「当社(あるいは事業部など)の強み・弱み・機会・脅威を思いつくままに付箋(せん)に書いて下さい」とメンバーに指示を出して下さい。最初はなかなか出てこないと思いますので、まずは強み・弱みだけにフォーカスさせても良いと思います。20~30分くらい時間を与え、その後にメンバーが書いた付箋(せん)をホワイトボードに張ってもらうわけです。さて、どうなりますかねえ…。

 これは筆者の想像ですが、おそらく「強み・弱み・機会・脅威」の捉え方が全員バラバラになるのではないかと思います。それも、びっくりするくらいにバラバラ。このバラバラの状態を知ることで、あなたは大きく分けて2つの「気付き」を得ることができます。

 まず1つ目ですが、「今まで見逃していたけど、確かにこれって強みだよね!」「なるほど。言われてみれば、それって大きな市場機会だなあ!」など、あなたにとって「新たな視点」という気付きが得られます。そして、2つ目として「理念やビジョンが伝えきれていない(示せていない)」という現状を、否が応でもあなた自身が「自覚できる」という気付きが得られます。

 前回述べた通り、SWOT分析はリーダー自身が「将来像・あるべき姿」を強い意志として打ち出していなければできないものです。なぜなら、「強み・弱み」と「機会・脅威」の判断の軸が定まらないからです。

強み・弱みのイメージ共有がチーム力を高める

 SWOT分析をちゃんと学ぶ前に、もしこのような取り組みをチームでしていたら、「強み・弱み・機会・脅威」をしっかりと書けないメンバーに対し、「何も分かっていない」「勉強が足りない」「やる気が無い」といら立ちだけを覚えたかもしれません。でも、実はリーダーが「将来像・あるべき姿」をメンバーにしっかりと打ち出していない、あるいはメンバーが理解できる言葉で伝えきれていないことが原因のひとつかもしれないのです。

 もし、この状態のままで新製品のマーケティングについての議論を進めていたら、いったいどうなっていたでしょうか。きっと「なかなか意見がまとまらない」「一体感が無い」「協力関係が作り難い」などなど、基本的なところでのつまずきが頻発していたことでしょう。チームのメンバー全員が、ある程度同じSWOT分析をイメージできれば、よりいっそう一枚岩でのチーム力が発揮しやすくなるとは思いませんか。ぜひ、あなたのチームでも活用してみて下さい。