失敗映像も見る
ともすると我々は、世界トッププレーヤの超スーパープレーだけが編集してあるかっこいいイシーンだけを見てしまいがちだ。ところが実際の試合では、けっこうバカをやっているものだ。完璧なプレーを脳に焼き付けると、自分が失敗した時に「あぁ、なんて自分はダメなんだ」とテンションが落ち込んでしまう。脳はこれが嫌いで、やる気を無くしてしまうものだ。思い通りに行かないと、ストレスにつながり、モチベーションも消え失せてしまうから、テニスが嫌いになり、やがては止めてしまう。
トッププレーヤのおバカなシーンも見ておくと「自分がドジっても、トッププレーヤだって、ドジってるんだから気にしない」となる。失敗シーンも重要な学習効果をもたらすのだ。トップでもドジるのだから自分がドジっても当たり前と、いちいちへこむことがなくなるので、試合でも気力を維持しながら戦える。この心理訓練がスポーツには重要である。前向きな気持ちを崩さない訓練が、対戦相手に負けない気力をもたらし、試合本番で大きな成果を上げる。また、次々と先端テクニックへ挑戦する積極的なアスリート魂を育む。
自分のプレースタイルをビデオで見るのを拒んだテニス仲間がいた。結局は試合の勝率は上がらずじまいで、いつも同じ愚痴をこぼしていた。いつまでも自分のプレーを見ることなくテニスを続けている人は、何年経っても欠点がそのままで上手くならない。自分の頭には世界トップレベルのプレーシーンが自分のプレーとかぶって再生されているから、自己満足のままでいる「裸の王様」なのだ。試合に負けても、なぜ自分が負けたのか、自分の欠点に気づかずじまいで、運が悪かったとか、ダブルスのパートナーが悪いとか、都合のいい解釈で終わらせているケースが多い。