失敗映像も見る

自分のプレーをスマホで撮影してチェックする(モデルはプライベートコーチのトーマス)
自分のプレーをスマホで撮影してチェックする(モデルはプライベートコーチのトーマス)
出典:サイバー大、2013年度紀要、研究報告「スポーツにおけるオンライン学習効果」、久保田達也より

 ともすると我々は、世界トッププレーヤの超スーパープレーだけが編集してあるかっこいいイシーンだけを見てしまいがちだ。ところが実際の試合では、けっこうバカをやっているものだ。完璧なプレーを脳に焼き付けると、自分が失敗した時に「あぁ、なんて自分はダメなんだ」とテンションが落ち込んでしまう。脳はこれが嫌いで、やる気を無くしてしまうものだ。思い通りに行かないと、ストレスにつながり、モチベーションも消え失せてしまうから、テニスが嫌いになり、やがては止めてしまう。

 トッププレーヤのおバカなシーンも見ておくと「自分がドジっても、トッププレーヤだって、ドジってるんだから気にしない」となる。失敗シーンも重要な学習効果をもたらすのだ。トップでもドジるのだから自分がドジっても当たり前と、いちいちへこむことがなくなるので、試合でも気力を維持しながら戦える。この心理訓練がスポーツには重要である。前向きな気持ちを崩さない訓練が、対戦相手に負けない気力をもたらし、試合本番で大きな成果を上げる。また、次々と先端テクニックへ挑戦する積極的なアスリート魂を育む。

 自分のプレースタイルをビデオで見るのを拒んだテニス仲間がいた。結局は試合の勝率は上がらずじまいで、いつも同じ愚痴をこぼしていた。いつまでも自分のプレーを見ることなくテニスを続けている人は、何年経っても欠点がそのままで上手くならない。自分の頭には世界トップレベルのプレーシーンが自分のプレーとかぶって再生されているから、自己満足のままでいる「裸の王様」なのだ。試合に負けても、なぜ自分が負けたのか、自分の欠点に気づかずじまいで、運が悪かったとか、ダブルスのパートナーが悪いとか、都合のいい解釈で終わらせているケースが多い。

 読者のみなさんは、自分のプレゼン映像を見たことがあるだろうか。結婚式のスピーチなどで、「話が長い」、「メモを読むだけでハートがない」、「自分の言葉で話していない」と思ったことがあるだろう。最近の結婚式は、その日の2次会で放映されることが多いので、改めて自分のスピーチを見た時に愕然としたなんて声も聞いたりするでしょう。でも、多くの方はビジネススピーチも同じようにしていると思います。スマホでこっそり自分の部屋でプレゼン撮影してチェックしてみるといいでしょう。また知人にオンライン上でチェックしてもらうのも確実に提案力を強化できる方法だ。これでいいだろうというところまでプレゼンが完成したら、その映像を仲間に見てもらう。思わぬ落とし穴を指摘されることもあるが、そのときは「本音をありがとう」と素直に改善に取り組めばいい。