連載の第16回と第17回では,LSI製造プロセスの全般にかかわり,歩留まり向上に欠かせない洗浄技術を取り上げる。洗浄の基本的な手法は1970年代から変わっていないが,LSIの微細化や新材料の導入に伴って,その技術課題はここに来て増大している。

 LSI製造プロセスにおいて,パーティクル(微粒子)や金属,有機物によるデバイスの汚染は,製造歩留まりや動作信頼性を低下させる。そこで,工程ごとにSiウエーハに付着した汚染を除去し,汚染を次の工程に持ち込まないようにする必要がある。このためのプロセスがSiウエーハの洗浄である。洗浄はLSI製造の全般にわたって必要なプロセスであり,そのステップ数は全ステップの20~25%程度と高い比率を占める(図1)。

図1●洗浄はLSI製造に欠かせない
洗浄はLSI製造の全般にわたって必要なプロセスであり,全ステップの約20~25%を占める。大日本スクリーン製造のデータ。

 LSIの微細化が進むにつれて,Siウエーハ洗浄の重要性は以前に比べて高まっている。設計ルールが大きいLSIでは許容されたわずかな汚染が,歩留まりや信頼性に影響を与えるようになるためである。一方,そうしたわずかな汚染を除去するために洗浄に求められる技術的な要求は,高まり続けている(図2)。

図2●微細化で洗浄への技術要求が高まる
微細化に伴って,わずかな汚染がLSIの歩留まりや信頼性に影響を与えるようになった。国際半導体技術ロードマップ(ITRS)のデータを基に大日本スクリーン製造が作成。
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 以下では,まずSiウエーハ洗浄の基本原理を説明する。それに続いて,LSIの微細化に伴って生じる技術課題を明らかにし,それに応える技術開発の現状について説明する。