(3)部品メーカーとのコラボレーション

 使用したい部品が入手しにくい,あるいは市販されていないときは,その市場に参入したいと考えている部品メーカーと共同開発することもある。 少し前までは,機器メーカーが部品メーカーに対して部品の開発費を負担して,その機器メーカーしか使えない特注部品を依頼している場合が多かった。この場合,生産数量が少なく部品の価格が高くなりがちだった。

 最近では,機器メーカーが部品メーカーにその部品の仕様などの情報を提供し,部品メーカーは自社の開発費で部品を開発/試作するケースが増えている。もちろん部品メーカーは,その部品を汎用部品として不特定多数の機器メーカーに大量に拡販してもよいという交換条件で,開発/試作業務を請け負う。この場合は,部品を大量に生産するので価格も安くなる。中堅の部品メーカーを中心に,このようなコラボレーションを行う例が多くなってきた。

(4)量産組み立てを考慮した部品選択

 機械で製造するか,人件費が安価な海外において人手で製造するかは,製品の生産数量などを考慮して判断するが,これによって使用する部品も変わる。部品実装機による組み立ての場合は,その部品実装機で扱える小さなチップ部品やBGA(ball grid array)などの部品も使用できる。これに対し,人手で組み立てるときは,組み立てが可能で不良が出にくいように,設計段階である程度の大きさの部品を採用しなければならない。

(5)モジュール,専用ICの採用

 モジュールや専用ICを利用できるときは,必要なら等価な回路を多数のディスクリート部品で実現する場合と比べてみる。部品価格の合計は後者の方が安価であっても,実装する部品数量が多くて実装費用がかさむと全体のコストは高くなる。部品単価が高くても,モジュールや専用ICを採用することで,製品として低価格化できることもある。

 量産数量が非常に多い場合や部品メーカーの都合で部品供給に不安がある場合は,機器メーカーが専用ICを独自に作り出すことも実際に行われている(図9)。1枚のウエハーを幾つかの区画に分けて,数社で共有して試作を行うといった発注がやりやすくなったことによって,1社当たりの専用ICの試作費もだいぶ安く抑えられるようになってきた。最近では,部品メーカーが機器メーカーの要求に応じて,自社の高周波ICの修正やカスタム化をするワイヤレス用のセミカスタムASIC(application specific integrated circuit)まで登場してきている。また,開発費用を削減するために,ICの要素回路やソフトウエアのモジュールなど,いわゆるIP(intellectual property)を購入してしまうこともある。

図9 専用ICの自社開発とその評価基板の例
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