RFIDは,既に特定の用途で実用化されています。可視光通信は現在も試験段階ですが,光は身近であり電波とは一味違う通信が行えるので,独自性のあるシステムを作れます。携帯電話の第4世代(4G)は長い目で見る必要はありますが,既に実験が始まっています。

冷静に新しい規格を創っていくべき

 ここでは,ワイヤレス通信のさまざまな規格について,生まれた経緯を含めて用途や技術の面から分類しました。ワイヤレス通信は今や世界全体で市場を形成しているため,独自の規格を持っていては相互接続性を保つことができず,市場を狭める結果になります。そのため近年では,まずは標準化ありきで,世界中どこでも同じ規格にして普及を促しています。

 このこと自体は,ユーザーの利便性の面からも非常に良いことです。また,同じ規格にのっとった製品が市場に出回るためにコスト意識が高くなり,これもユーザーにとっては低コストで商品を購入できるというメリットにつながります。

 しかし一方で,このような競争は価格の下落を生み,新たな利益を得られる分野へと関心が向かいます。そのため,新しい規格が次々と生まれていくのです1)

1)中川,「公共インフラからコンシューマ通信へ,変貌を遂げたワイヤレス通信技術」,『日経エレクトロニクス』,2007年4月9日号,no.949,pp.P70-P75.

 新しい規格は,用途や技術の面で斬新なものにしていかねばなりません。これまでの規格に沿ったシステムでは実現できなかった利用シーンを想定し,新しい市場を開拓するはずです。しかしワイヤレス通信の目覚ましい進歩によって我々の生活が便利になった今,市場は「ある」のではなく「創る」ものとなりつつあるといえます。

 市場を創るためには,利害関係が絡むことは当然あり,似たような規格や対立した規格がどうしても出てきてしまいます1)。このため,規格の違いを経緯も含めてきちんと把握し,コストを加味して評価していくことが重要です。