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HOMEものづくり事故から学ぶ材料力学 > 第2回:壊れない設計への第一歩

事故から学ぶ材料力学

第2回:壊れない設計への第一歩

  • 沢 俊行=広島大学
  • 2010/04/08 00:00
  • 1/4ページ
今回のポイント
●「鋳鉄ハブ」と聞いて,あなたは何を感じるか
●各種荷重が作用したときの材料の壊れ方を知る
●破損のクライテリアから壊れない設計へ

 三菱ふそうトラック・バスの一連の大量リコールは,ハブの強度不足が原因とされています(図1)。材料は鋳鉄。『日経ものづくり』によれば,同社を含め主要トラックメーカー4社すべてが鋳鉄製のハブを使用しているとのこと1)。しかしそれを聞いて,私は少なからず違和感を覚えましたが,読者の皆さんはいかがでしたでしょうか。鋳鉄製ハブの安全性に関する議論はほかの専門家にお任せするとして,ここではあくまで一般論を述べたいと思います。

1)高野,「安全なハブはどこにあるのか」,『日経ものづくり』,2005年1月号,pp.91-96.

図1 問題のフロントハブ
(a)材料は球状黒鉛鋳鉄(FCD)。車両や積荷の重力をはじめ,タイヤが路面から受ける反力,発進・制動時に発生する進行方向の荷重,路面の凹凸による垂直方向の荷重,旋回時にタイヤと路面との間に発生する摩擦力などの荷重が作用する結果,ハブには引っ張り応力や圧縮応力が発生する。(b)亀裂発生部位を拡大したところ。
[画像のクリックで拡大表示]

 私が抱いた違和感とは,引っ張り応力が作用する部位に鋳鉄を適用するということの是非。実は,鋳鉄という材料はそもそも圧縮部材です。すなわち,用途として圧縮応力がかかる部位には適すが,逆に引っ張り応力が作用する部位には適さない。従って歴史的には,高い振動減衰能や耐摩耗性といった優れた特性を生かしつつ,例えば機械分野では旋盤のベッド,土木分野では柱といった,いわゆる圧縮応力下で使用する部位(圧縮部材)に利用してきたのです。

 もちろん,これにはきちんとした理由があります。鋳鉄の組織の中に析出している黒鉛が角を持つ(片状である)ため,引っ張り応力が作用したときにそこに応力が集中して亀裂が入りやすい。これがJIS(日本工業規格)でいう「FC(普通鋳鉄)」で,だから引っ張り荷重や曲げ荷重に弱いとされるのです。

 しかも,強度のバラつきが読みにくい。それ故,信頼性を高めるには一つ二つ実験しただけでは全然ダメ。たくさんのデータを取り下限値を踏まえた上で,さらに安全率を考慮する必要があります。

 これに対し,黒鉛の形を片状から球状に改良して応力集中を起きにくくしたのが,いわゆる「FCD(球状黒鉛鋳鉄あるいはダクタイル鋳鉄)」。ハブに利用されているのは,このFCDの方ですが,しょせん圧縮部材であるFCの延長上の材料に変わりはありません。確かに延性が改善されたとはいえ,基本的な考え方としては,引っ張り応力の発生する部位には使わない方が望ましい。

 ただ,誤解しないでいただきたいのは「使うな」と決め付けているわけではないということ。当然ですが,工業的には形状やコストなどの厳しい要求から利用せざるを得ない場面は多々あると思います。その場合には,実験的な裏付けをきちんと取る。安全を確認して使うのなら問題はありません。このことは,ハブとて同じ。そこにFCDを適用すること自体が悪いわけではないのです。実験的,理論的な裏付けさえきちんと取っていれば。

引っ張りで延性材料には斜めの筋

 ある部位にある材料を適用しようとしたときに「これは安全」「これは危険」という「勘」が働くようになれば,技術者として成長してきた証しです。しかし,その勘を養うのに近道はありません。それは,基本を一つひとつ身に付けたりさまざまな経験を積み重ねたりした上での総合的な判断に根差しているものだからです。

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