前回は,2000年代に入っても,マイコンの出荷数量が予想外に増え続けていることを紹介しました。市場が伸びていることから,マイコン・メーカーは活発に製品を展開しています。その中で,マイコンの価格や品種,仕様,性能は大きく変わってきました。今回は,これらの変化について説明しながら,最近のマイコンの特徴を俯瞰します。(連載の目次はこちら

 マイコンは多種多様です。汎用もあれば特定用途に絞った製品もあります(図3)。多くの製品に共通した変化として,次の4点が挙げられます。(1)価格の低下,(2)フラッシュ・メモリ搭載品種の拡大,(3)8ビットから16ビット,32ビットなど上位への移行が容易になるように周辺回路や開発環境が共通化,(4)性能の向上,です。さらに,マイコンの適用範囲が広がっている特徴的なこととして,(5)10端子以下の少端子の8ビット・マイコンの普及,があります。それでは,順を追って説明していきましょう。

図3 マイコンの使い勝手が良くなる
図3 マイコンの使い勝手が良くなる
マイコンの使い勝手が良くなる 市場が伸びていることから,マイコン・メーカーが活発に製品を展開しています。開発環境を安価に提供するなど自社製マイコンの普及に懸命です。
(1)価格は数十円から
 価格は,大幅に下がっています。WSTS(世界半導体市場統計)で約10年前の1997年と2006年7月の平均単価を比べて見ると,32ビットで15.6米ドルから4.9米ドルに,16ビットで6.1米ドルから1.2米ドルに,8ビットで2.4米ドルから1.1米ドルに,4ビットで1.1米ドルから0.43米ドルへとどれも大きく下がっています。これは平均値ですから,安い品種の大量購入時の価格は,この半分程度になる場合もあります。つまり,100円玉一つで購入できる製品が増えています。

 低価格化はまだまだ続きます。32ビット品を1米ドルで提供するマイコン・メーカーも登場しました。米Luminary Micro,Inc.は,ARM Cortex-M3コアを搭載した32ビット・マイコンを1米ドルから販売しています。

(2)フラッシュ搭載マイコンの品揃えが豊富に
 フラッシュ・メモリ搭載マイコンの品ぞろえは,急速に充実してきました。価格も下がり,安いものですと10端子以下の8ビット・マイコンのフラッシュ・メモリ版でも数十円になっています。

 ただしメーカーによってフラッシュ・メモリ搭載マイコンに対する力の入れ具合が異なるようです。積極的なメーカーは,コストを安くできる製造ラインをフラッシュ・メモリ搭載マイコン向けに振り向けています。

 フラッシュ・メモリを使うことで,技術者は自在にプログラムを変えられるようになりました。マスクROM版のバグによる,マスクの作り直しという心配からも解放されました。