モービル・パワー・エレクトロニクス製品は,擦り合わせ型アーキテクチャの比率が高い。ただし,擦り合わせには有効な方法論がなく,ほとんどを打ち合わせに頼っているのが実態だ。ここでは異なる専門技術の担当者がバラバラのことを言い始めて,会議が進まないことがある。全体像が見えない人,他人の発想法や用語が分からない人も多い。「おまえの言うことは全く分からん」と言う人の発言ほど,理解しにくいこともある。

 さらに,詳細設計が先行して擦り合わせが後回しになることもあり,擦り合わせの労は尽きない。「概念設計は上手でないが,擦り合わせの労を惜しまないのが我々の強みではないか」と自嘲することも多々ある。一般的に指摘される問題点として,(1)合意形成,決定までに時間がかかり,知的生産性や時間効率が悪くなる,(2)有能なリーダーがいないと,低いレベルでの妥協やゴリ押し勝ちになりやすい,といったことが挙げられる。

時間効率と質を高めるには

 こうした事態を打開するために最も有効なのは,擦り合わせ工程を減らすことである。つまり,概念設計で擦り合わせ依存度の少ないアーキテクチャを選択することだ。顧客が評価しない部分を固定部(モジュール)とし,差異化するものを変動部(擦り合わせ)とする裁きの腕が成否の分岐点となる。

 次に有効なのは,擦り合わせ開発環境の効率化である。連成解析ソフトウエアやノン・リニア/ノン・パラメトリックな問題を扱う知識ベースCADなどの導入が有効だ。ただし,現状では概念設計の一部のプロセスをカバーするだけにとどまっている。また,CADを使うのは結局,人であることも忘れてはならない。