――Healint社を設立した経緯を教えてください。

カデュー氏 もともと私はフランスの大手製薬会社、サノフィの出身。1999年に来日し、日本のサノフィで「プラビックス」(血液の凝固を防ぐ抗血小板薬)の開発に携わっていました。そこで医療に関するデータ収集の重要性を経験し、2013年にヘルスケアベンチャーを立ち上げようと思い立ったのです。

 HealintはHealthとIntelligenceを合わせた造語で、シンガポールが拠点です。我々の事業の中心はビッグデータとデジタルヘルス。共同創立者であるCTOのアリ・エルガマル(Ali Elgamal)はIBM社出身で、過去に金融システムに従事したセキュリティーのスペシャリストです。CMOのベロニカ・チュー(Veronica Chew)はGE Healthcare社出身で、センサーや心電図などのデータの信頼性を厳しくチェックしています。そのほか、我が社には世界各国からデータサイエンティスト、プログラマ、エンジニアが集っています。

――単純にアプリだけを開発しているわけではないのですね。

カデュー氏 はい。まずは独自のアルゴリズムと機械学習の手法を用いて、数多くのセンサー類からビッグデータを収集する仕組みを作りました。米Apple社の「ResearchKit」(医療・健康研究関連のオープンプラットホーム)のような考え方に近いかもしれません。

 その後、このプラットホームを活用する術として、全世界で10億人の患者がいる片頭痛にフォーカスしました。片頭痛発生のメカニズムはまだ原因が不明な点も多く、改善できることもあるという思いから頭痛ろぐの開発に至ったのです。そして2014年夏に頭痛ろぐのAndroid版をリリース。Androidは対応機種が多いですが、iOSより制約が少ないという利点があります。現在は全世界で6万人が利用しています。