台湾ADLINK Technology社ChairmanのJim Liu氏
台湾ADLINK Technology社ChairmanのJim Liu氏

台湾の産業用組み込みボード大手ADLINK Technology社は、医療向けの組み込みシステムを得意とする独Penta社を買収することを2014年3月に明らかにした。この狙いなどについて、「ESEC2014/組込みシステム開発技術展」(2014年5月13~15日に東京ビッグサイトで開催)に合わせて来日した、ADLINK Technology社ChairmanのJim Liu氏に聞いた。

 ADLINK Technology社は、Penta社の全株式を買収するために540万ユーロを投ずる。1994年に設立されたPenta社は、高い信頼性を要求される医療機器向けの組み込みコンピュータやパネルPC(液晶ディスプレー一体型の組み込みコンピュータ)などを手がけている。

 Penta社の買収は、約2年前からADLINKが展開している中長期の事業戦略の一環だ。すなわち、「メディカル」「インフォテインメント」「ネットワーキング」「テスト/計測」「防衛/交通」といった5つの分野を集中的に開拓する戦略だ。つまり、今回の買収の狙いは、5つの重点分野の一つである「メディカル」の市場開拓に向けた事業強化である。

 この戦略の背景には、組み込みボード・ベンダーに対する顧客の要求が高度化していることがある。製品サイクルが短かくなるにつれ、開発に費やせる期間も短くなっている。これとともに設計・開発に携わる技術者の負荷は増える一方だ。こうした中で製品の競争力を維持するためには、自社の限られた開発リソースを付加価値の源泉となる領域に集中させる必要がある。

 そこで制御システムの開発やそれに組み込むソフトウエアの選択、システム・プラットフォームといった設計の基本的な部分を社外に任せる方法を選択する企業が増えている。「実際に、モジュールからシステム、システムからプラットフォームへと顧客が要求するサービスの領域は着実に広がっている」(Liu氏)。だが、顧客の領域に踏み込んだ商品やサービスを提供するとなると、どうしても用途に特有の技術やノウハウが必要になる。そこで、今回のように特定分野に強みを持つ企業の買収に踏み切った。