グリーンハウスの実験農場に設置した円筒型色素増感太陽電池。九州工業大学がウシオ電機の協力を得て開発した。(写真:九州工業大学と科学技術振興機構のニュース・リリースより)
グリーンハウスの実験農場に設置した円筒型色素増感太陽電池。九州工業大学がウシオ電機の協力を得て開発した。(写真:九州工業大学と科学技術振興機構のニュース・リリースより)
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――早瀬氏の研究グループは研究方針として、新しい材料を研究開発し、色素増感太陽電池の変換効率を高めることも掲げる。この研究について知りたい。

早瀬氏  これまで、色素増感太陽電池に使う色素に有機物を使ってきたが、最近はペロブスカイト系材料を用いた色素による色素増感太陽電池の研究に取り組んでいる。この材料は無機材料と有機材料のハイブリッドになっている。電解液は使わないので、全固体形である。

 この色素増感太陽電池は、高い変換効率を狙えるのが特徴だ。従来の有機色素では波長800nm以下の光を吸収したが、ペロブスカイト系材料は1000nmよりも長波長の光を吸収できるので、その分、変換効率を高められる。私の研究グループでは波長1060nmまで吸収できるペロブスカイト系材料の色素を使い、変換効率14.5%を得た。ハイブリッド系材料を使い、変換効率20%の色素増感太陽電池の開発を目指す。ただ、材料内に鉛(Pb)を含んでいるので、Pbフリー化も同時に狙いたい。

――ペロブスカイト系材料による色素増感太陽電池で円筒型を実現可能か。

早瀬氏  有機色素と電解液を用いる従来の色素増感太陽電池とセル構造が異なり、さらに製造プロセスも異なるので、円筒型にすぐに適用することは困難だ。だが、シート状にフィルム化したセルを作製し、それをまるめて円筒型にする手はある。

――円筒型で太陽電池の新用途を開拓し、新材料でさらなる進化を図るとなると、開発項目は多岐にわたる。

早瀬氏  学会やセミナーなど講演会に登壇する機会を活用している。私の研究グループの取り組みを聞いた方々から、「こんな材料があるのだが、使えないか?」とオファーをいただくケースは少なくない。製造プロセスや材料など、我々が気付かなかった情報が入ってくる。

 太陽電池で新用途を狙うとなると、新材料の探索が欠かせない。その点において、研究開発拠点が日本にある利点は大きい。日本企業はまだまだ材料技術が強い。海外の研究グループが入手しにくいような新材料が、日本にいることで容易に入手可能だ。2014年7月に開かれるセミナー「有機エレクトロニクスの次の方向性を考える」に登壇する際も、参加者から情報をいただけることを期待している。

【お知らせ】日経BP社が有機エレクトロニクス材料研究会(JOEM)と協力し開催するセミナー「有機エレクトロニクスの次の方向性を考える~機器や社会の変革を起こすコア技術~」(詳細はこちら)では、早瀬氏に「液体および全固体色素増感太陽電池の最近の動向 ~プリンタブル太陽電池としての動向」という題目で講演いただく予定である。他のセミナー講演者へのインタビュー記事は有機エレクトロニクス専門サイトのコラム「キーパーソンに聞く」内にあり。