瀋陽市は遼寧省の省都で、東北3省に内モンゴル自治区を加えた地域で中心的な役割を担う。城内人口は1億2000万人を突破しているとも言われており、これは中国の総人口の1割を占める規模だ。歴史的に製造業の拠点となっており、日系企業としては航天三菱(三菱自動車のエンジンを生産)などメーカーが多い。新たに開発した「渾南新区」では健康産業など次世代の成長産業の集積を計画しており、その狙いを瀋陽市副市長で同開発区のトップを勤める楊亜洲氏に聞いた。(聞き手は、坂田亮太郎=北京支局長)

Q.日本企業が瀋陽に進出するメリットは何ですか?

 中国に進出する企業にとって、3つの要素が重要となるでしょう。1つ目は、自社の製品やサービスを売り込むマーケット、2つ目が進出するためのコスト、そして3つ目が受け入れる側である地元政府の優遇政策です。

楊亜洲氏
楊亜洲氏
中共瀋陽市委常委、瀋陽市人民政府副市長、中共渾南新区区委書記

 中共瀋陽市委常委、瀋陽市人民政府副市長、中共渾南新区区委書記

 まずマーケットについてお話ししましょう。中国が改革開放政策に取り組んでから外資系企業がたくさん中国に進出しましたが、それらの企業は中国を主に生産拠点と見てきました。中国で生産した製品を日本や他の国に輸出してきたのです。

 しかし、中国が経済発展した今は状況が変わりました。自動車をはじめさまざまな商品分野で中国が世界最大の市場になっています。当然のことながら、日本企業も中国市場で売り上げを増やすことを狙っています。

 瀋陽は東北地方3省と内モンゴル自治区の周辺において中心的な役割を担う都市です。この地域の人口は1億2000万人程度を推定されており、それは中国の全人口の1割を占める規模です。これだけでも瀋陽に進出するメリットは大きいと言えるでしょう。

 瀋陽は内陸に位置するので、上海などの沿岸部の都市と違って日系企業の進出はこれまで余り多くありませんでした。その数は300社程度でしょう。大半の日系企業は瀋陽で生産した製品を、中国の国内市場向けに販売しています。有名な大企業としては三菱系の「瀋陽航天三菱汽車発動机制造有限公司」があります。この会社は三菱自動車が株式の25%を保有する合弁会社で、主に自動車用のエンジンを生産しています。

 今後、日本で企業誘致のプロモーション活動を展開する際に、航天三菱が瀋陽に進出していることを宣伝ポイントにしたいと思っています。日本の著名企業が進出した結果、日本で有名になった都市がいくつかあります。湖北省の武漢には日産自動車の合弁会社である東風日産が進出し、日本での認知度が高まりました。江蘇省の常熟にはトヨタ自動車が研究所を設置し、中国市場向けのハイブリッド車の開発に取り組んでいます。三菱自動車も日本で知名度が高いので、瀋陽の魅力が伝わることを期待しています。