―─青森には、ライフイノベーションに向けた技術シーズが数多く存在するというわけですね。

三村申吾
(写真:淡路 敏明)

 その通りです。一方で、医療ニーズという点では、弘前大学医学部附属病院の存在も見逃せません。同大学は、かつてX線CT装置やMRI、内視鏡といった医療機器の原点を発明するなど、研究・医療水準が極めて高いことで知られています。このような医療の現場と、ものづくり企業が徹底した連携を図れる環境にあることも、我々の強みと言えます。

 さらには、温泉や食といった地域資源もあります。これらも、ライフ関連のサービスに、うまく結び付けていけると考えています。

―─戦略の中には「地域特性」を活用して取り組むと示されています。地域特性とは何を指すのでしょうか。

 先ほど述べたように、青森県は平均寿命が短いという現実があります。さらに、医療リソースの偏在などといった課題もあります。裏を返せば、健康づくりや成人病対策、遠隔診断などの医療ITサービスを、最も試しやすい地域であると言えるでしょう。

 課題が多い青森で実証できれば、それを日本全国、さらには世界に持っていくことができるかもしれません。つまり青森県は、ライフ関連ビジネスを実証するフィールドとして、ものすごく可能性がある場所なのです。

 GEヘルスケア・ジャパンが青森県に関心を示している理由の一つも、そこにあると思います。今何が必要なのか、どのように対応したらビジネスにつながっていくのかを、具体的に知ることができる場所なのですから。

―─課題が多いことが、青森の強みとも言えるわけですね。

 はい。もう一つ、青森ならではの強みがあります。それは、青森県民特有のフロンティア・スピリットです。

 「奇跡のリンゴ」をご存じですか?不可能と言われていたリンゴの無農薬栽培を成し遂げた話です。このように、人がやってないことをやってみよう、隣より良いものを作ろう、という意識がものすごく強い地域なのです。こちらの方言では、「もつけ」の精神があると言えるかもしれません。

 だからこそ、突拍子もない技術や、「あれ?」と驚くような技術が存在しています。実際、GEヘルスケアには、青森にある多くの技術に対して「面白い」と感じてもらっているようです。

 一方で、これまでは興味深い人や技術ばかりが先行していて、その出口をあまり考えてこなかったのも事実です。今回、ライフイノベーション戦略を策定したり、GEヘルスケアとビジネス・マッチングを実施したりすることで、良い意味で出口を探ろうという方向に向かっているわけです。