安徽省の省都・合肥市は、上海から西へ約400キロ、高速鉄道で約3時間の距離にある。その中核を担う国家級開発区が合肥経済技術開発区である。これまで安価な労働力と地価を背景に家電、自動車・自動車部品、電子情報、設備製造といった産業を基盤に発展を遂げてきた。今後はバイオ製薬を始めとする振興産業にも力を入れていくという。富山に本社を持つ製薬会社ダイトの開発区進出を機に、富山県の製薬企業向けの投資説明会で富山市を訪れた合肥経済技術開発区工作委員会書記、管理委員会主任の姚衛東氏に、バイオ医薬を中心とした開発区の発展戦略を聞いた。(聞き手は、中田靖=アジアビジネス本部)

バイオ企業の誘致目的に富山市でセミナーを開催

今回、富山県の製薬企業向けの投資説明会を富山市で開催され、書記ご自身もわざわざ中国安徽省合肥市から来日されました。合肥経済技術開発区はバイオ製薬の発展に並々ならぬ力を注がれていますね。

姚衛東氏
姚衛東氏
合肥経済技術開発区工作委員会書記、管理委員会主任

 合肥経済技術開発区に投資を決めたダイト(本社富山市)との正式調印のために来日しました。そのタイミングで、ダイトの笹山眞治郎社長が会長を務められている富山県医薬品工業協会と富山県薬業連合会の協力のもと、医薬品産業投資説明会を富山市で開催することができました。ダイトに原料薬品を卸している千輝薬業の本社が合肥経済技術開発区内にあることから、今回、ダイトが開発区に工場を建設することが決定しました。

 バイオ製薬が合肥市の産業の中に占める割合はまだそんなに大きくはありません。ただ、第12次五カ年計画においてバイオ製薬が国家発展の重点産業の一つになったことで、合肥市でも注力していくことになりました。そのために開発区でも積極的に誘致戦略を展開していきたいと思います。

 外資の誘致の中でも一番に注目しているのは日本企業です。今回の富山でもこのセミナーの前に2社、地元企業を訪問しましたが、いずれも少ない敷地面積に少人数で効率的に薬品を製造しているのには驚かされました。日本企業の技術は中国企業よりも高いと思います。この優れた技術を中国に展開していただければと思います。

半径500キロ圏、約5億人の市場を狙う

ダイトの笹山社長は、パイの限られている日本市場だけで勝負するのではなく、今後は海外市場、中でも「高齢化へ向かう、米国と中国という2つの巨大マーケットで積極展開する」考えです。これは日本の製薬会社の共通認識になっているようですね。

 高齢化社会に移行していく中国では今後バイオ医薬の需要はますます高くなっていきます。中国の病院ではどこでも患者であふれています。人口が多い中国では今後もこうした患者が確実に増えていきます。そこには品質の良い優れた医薬品の需要が確実に存在します。

 合肥市がある安徽省は約6800万人の人口を抱えています。さらに合肥を中心とした半径500キロ圏には、約5億人の人々が暮らしています。この人々が合肥で生産するバイオ医薬品の潜在的な顧客として期待できます。

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 また、富裕層や高齢者が増えるにつれて成人病患者も増えていきます。ダイトも一般医薬品やジェネリック医薬品を合肥に建設する工場で生産し、中国市場に向けて発売する計画です。

 合肥市医薬健康産業園は合肥経済技術開発区の中にあり、敷地面積は400ムー(約2万6600平方メートル)あります。プロジェクトの第一期では主に中小企業の倉庫保存ですが、二期には製薬会社を誘致していく考えです。開発区に工場を建設すれば、開発区にある巨大な医薬品配送センターも利用できます。昨年、このセンターの貿易額は30億元に達しました。