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インタビュー

国家級に昇格し「3新産業」で新たな発展へのスタートを切る

張家港経済技術開発区副主任の陶恵興氏

中田靖=アジアビジネス本部
2012/07/18 11:46
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張家港経済技術開発区は93年に江蘇省政府の許可を得て設立したが、2011年9月より省級から国家級に昇格したばかりの勢いのある開発区である。長江デルタ最大の24時間港を武器に発展を遂げた張家港市の2011年のGDPは1850億元、開発区内GDPも750億元に上る。張家港市の経済成長をけん引する張家港経済技術開発区では国家級への昇格を機に新エネルギー、新材料、新設備を中心とした新たな発展の新シナリオを描いている。そこで張家港経済技術開発区副主任の陶恵興氏に開発区の強みと新たな発展戦略を聞いた。(聞き手は中田靖=アジアビジネス本部)

長江デルタの主要都市に2時間以内にアクセス

張家港経済技術開発区の地理的優位性をお聞かせください。

タイトル
陶恵興氏
張家港経済技術開発区副主任

 張家港は長江デルタの中心にあって、上海、南京、杭州、常州、無錫がすべて2時間交通圏に納まります。張家港はその名前のとおり、長江デルタの沿岸地区で一番大きな港で、貨物の取扱量は2010年には2.2億トンを超えました。港からは日本、韓国へ船の直行便が出ており、大阪、神戸、名古屋、横浜へは週に7便が運行しています。

 張家港はこうした海運交通だけでなく、陸上交通も開発が進んでいます。南京・張家港・上海を結ぶ沿江高速と無錫・張家港を結ぶ錫張高速という2つの高速道路が開通しています。蘇州・常熟・張家港を結ぶバイパスも通っています。さらに張家港の港と沿江高速、錫張高速をつなげる疏港高速の建設も2011年からスタートしました。

 高速鉄道は、北京、大連から張家港、上海を通って広州までつながる沿海鉄道を建設中で、2015年に完成予定です。このほか南京・張家港・蘇州・上海を結ぶ沿江都市間鉄道と、南通・張家港・上海・嘉興を結ぶ通蘇嘉鉄道も企画中です。張家港市に空港はありませんが、一番近い無錫市にある蘇南国際空港からは大阪への便も開通しています。

タイトル

 張家港市の面積が999平方キロで、人口は150万人ですが、張家港経済技術開発区の敷地面積は153平方キロで、そこに50万人が暮らしています。張家港市の3分の1の人口が開発区に居住していることになります。

24時間対応の港を武器に発展

長江デルタには多くの注目開発区があります。そこにあって張家港経済技術開発区の優位性はどこにありますか。

タイトル

 長江デルタ最大の港を持つ張家港では、やはり港に優位性があります。対外貿易に機敏に対応するために、税関は24時間で対応します。実は税関は中央政府の垂直部門のため、通常は中央政府のやり方に従います。しかし、張家港にあっては、張家港市政府が24時間対応の行政サービスを実施しているため、税関もそのやり方にあわせて24時間対応になりました。

 通常の市政府は土日が休みで、夜も定時で退社します。しかし張家港市政府は企業から事前に連絡があれば土日でも対応します。平日も通常は8時間勤務体制ですが、何か問題が発生すれば、いつでも担当者の携帯電話と連絡がとれるようになっています。つまり、24時間体制で対応するわけです。こうした素早い対応が張家港の経済発展を支えているともいえるでしょう。

金利補てんなど中小企業向けの手厚い支援策を用意

張家港経済技術開発区の特徴とサポート体制を教えてください。

[画像のクリックで拡大表示]

 張家港経済技術開発区は1993年に設立した開発区で、当初は省級でしたが、2011年9月には国家級に昇格しました。開発区内のGDPは2011年は750億元、2012年には1000億元を見込みます。開発区に進出している企業は全部で3500社ありますが、うち320社は外資系企業です。地元の民営企業もよく発展していますが、海外からの投資も活発で2011年の外国直接投資(FDI)は2.5億ドルにも上りました。日本からは住友商事、伊藤忠商事、不二越、NSK、油研工業、不二製油などが進出しています。日系企業からの投資は今後どんどん増える見込みで、現時点で最終段階の商談を迎えている企業が何社かあります。

 我々は日本の大手企業の進出を歓迎しますが、それにもまして日本の中小企業を積極的に誘致したいと考えています。日本の中小企業は優れた技術力を持っている会社が多いからです。中小企業に対しては手厚いサポートが大切だと考えています。まずは企業が進出する際の資金面でサポートします。地元の銀行から資金を調達する手助けをします。金利も一般の企業よりも有利になる形で開発区が補てんします。進出する企業のために開発区でアパートを建設しており、企業の社員には安い家賃で提供します。中国の地元企業とのパートナーシップを検討されているなら、開発区ではマッチングサービスも提供します。

 また大手や中小に限らず、外資系企業については、電力供給の面で優遇します。2005年の夏は電力不足が張家港でも深刻な問題となり、4日間プラントを止めるといった事態も起こりました。しかし、わざわざ進出していただいた外資系企業には迷惑がかからないように、企業リストを作り、それを電力会社に提出することで、リストにある企業が停電しないよう対策を打ちました。そのおかげで、外資系企業は一社も停電することなく、プラントを動かすことができました。今、張家港では清華大学と共同でスマートグリッドの開発センターを設立して、電力の効率的な送電の研究を進めているので、今後は地元企業に対してもそうした電力トラブルの発生を防ぐことが可能になると思います。

第12次五カ年計画時代に3新産業を伸ばす

第12次五カ年計画の重点発展産業を教えてください。

タイトル

 張家港経済技術開発区ではこれまで機械、電子、紡績、冶金、自動車部品、食品の6つの分野の産業で発展してきました。しかし国家級に昇格したのを機に、第12次五カ年計画においては、3新産業を重点的に発展させていく考えです。3新とは、新エネルギー、新材料、新装備の3つの産業を指します。張家港経済開発区は市の中心部にありますので、環境汚染や騒音を発生する産業は認めることができないので、こうしたクリーンな産業の発展を考えています。

 3新産業というのは大きな概念で、それぞれ具体的な発展戦略を考えています。まず新エネルギーは太陽光発電を重点に発展させていく計画です。この開発区では産業チェーン、サプライチェーンを形成できるような企業誘致を考えています。太陽光発電産業の企業が集中しているエリアは、一番最初のシリコンウエハー、バッテリーのウエハーから、最終的なアクセサリーの組み立てや太陽光発電ステーションが作れるまで、それぞれの分野の企業を確保しています。

 2つ目の新材料分野としてはLED産業に力を入れています。LEDは環境に優しい産業です。LEDはまだ価格は高いですが、伝統的なナトリウムの電灯にとって変わるのは間違いないでしょう。欧州では法律も出て、ナトリウム電灯がLEDに変わるのは時間の問題となっています。LEDは省エネ面でも優れています。従来の電球に比べてて、節電率は50~60パーセントなので、将来性のある産業と考えています。

 3つ目の新装備とは、張家港の従来型産業である冶金や自動車部品などの生産設備をまるごと近代化できる装置を提供する産業です。

国家級への昇格で大型プロジェクトも容易に

張家港経済技術開発区は2011年10月に省級から国家級の開発区に昇格しました。国家級になったことで体制や対応で変わった点はありますか。

 国家級に昇格して一番のメリットは、新規プロジェクトに進出する際の手続きが省級時代よりも効率的になった点でしょう。今までは新規プロジェクト案件は商務局に提出しなくてはなりませんでした。しかし国家級になったことで手続き担当者を商務局に派遣して、そこで一貫した手続き体制をとることができるようになりました。

 また、プロジェクトに対する権限も拡大されました。国家級になったことで3億米ドルまでの審査権限を開発区が持てるようになりました。また3億米ドルを超えるような巨大なプロジェクトに対しても、承認がもらいやすくなりました。こうした大規模なプロジェクトの進出に関しては国家発展改革委員会に提出しなくてはなりません。それが省級の開発区から出された場合、なぜこの開発区がそんなプロジェクトをやる必要があるのか、他の開発区のほうが適しているのではないか、といった意見が出されることもあります。しかし、これが国家級開発区の場合は、そうした意見はあまり出ず、承認もすんなりと下りやすいのです。

 省級の時代は「経済開発区」でしたが国家級に昇格して「経済技術開発区」となりました。企業を誘致して、産業を発展させるには、この点が重要になってくるのです。

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