常熟経済開発区ハイテク産業園は常熟市の中心にほど近い地域にある歴史ある産業園区である。常熟市では第12次五カ年計画のもと、5つの産業を柱にした発展計画を描いているが、ハイテク産業園ではその方針に基づき、中でも精密機械製造、IT、新素材・新エネルギーの3分野を主軸にした発展計画を進めている。常熟は車で1時間で上海虹橋空港まで行けるが、2015年に完成予定の地下鉄を使えば35分でアクセス可能になる。上海近郊という魅力ある産業園区の発展計画を常熟経済開発区ハイテク産業園副主任の許俊氏に聞いた。(聞き手は中田靖=アジアビジネス本部)

5年で工業生産1000億元突破を目指す

常熟経済開発区ハイテク産業園はどのような開発区ですか。常熟市の発展計画とハイテク産業園の発展計画について教えてください。

許俊氏
許俊氏
常熟経済開発区ハイテク産業園副主任

 常熟市は第12次五カ年計画を踏まえ、5つの方面で産業発展の重点戦略を決めました。それは精密機械製造、自動車及び自動車部品、IT、新素材・新エネルギー、バイオ医薬という5つの産業です。

 常熟市には、常熟経済開発区、常熟東南経済開発区、ハイテク産業園、新材料工業園という2つの開発区と2つの園区という4つの経済園区があります。この中で、ハイテク産業園は、精密機械製造、新材料・新エネルギー、ITの3つの産業を発展させるという方針を決定しました。

 ハイテク産業園の昨年の工業売上高は582億元で、今年は714億元を目標にしています。さらに今後5年で1000億元を突破するよう頑張っているところです。

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 ハイテク産業園は1992年に設立された常熟経済開発区から出発しています。94年以降に外資誘致に注力していく中で、大きな資材の移動が必要な沿港工業園と、市内中心部に立地するハイテク産業園に分かれ、現在に至っています。

 我々のハイテク産業園はもともと地元企業が力を入れていた精密機械製造分野が発展しました。そしてIT分野や新材料・新エネルギー分野が、外資企業と協調しながら伸びてきました。園区の計画総面積は50平方キロですが、その中に日本をはじめ、ドイツ、オーストリア、オランダ、英国、韓国など、海外から260社の企業が進出しています。

 第12次五カ年計画で掲げたハイテク産業園の発展戦略も、もともと強みとしていた産業をさらに発展させるために打ち出したものです。売り上げではIT関連が40%、プラントを始めとする精密機械製造が30%、新エネルギー・新材料が15%、残りの15%はアパレル産業や電器産業となります。

 常熟市全体で見れば、トヨタ自動車が開発拠点を設立したり、ジャガー・ランドローバーが地元の奇瑞汽車(チェリー自動車)と共同で工場を建設したりしています。このため、自動車部品産業も重要な産業として位置付けられており、ハイテク産業園もサプライチェーンの一角を担う役割が期待されています。

IHI、シャープ、富士電機が進出

具体的にはどういう企業が進出しているのですか。

 日系企業ではIHIが進出してトンネル掘削用のシールドマシンの技術を提供しています。またシャープは早い段階からこのハイテク産業園に進出しており、複写機を生産しています。ドイツ企業はエレベーター製造の大手であるティッセンクルップ・エレベーターが進出しています。

 日系企業はまだ20社程度で多くはありませんが、今後は積極的に誘致を進めたいと考えています。昨年は日本に向けた経済誘致活動を実施した結果、5社の企業が新たに我がハイテク産業園に進出することになりました。

 常熟ハイテク産業園は、多くの企業が進出し、サプライチェーンも構築されているため、いい環境が整っています。我々には土地の資源やレンタル工場といった資源にもまだ余裕があります。一方、上海では土地やレンタル工場の市源は極めて少ない状況です。

 こうした多くの外資企業は独資で進出するのではなく、常熟の民営企業と合弁会社を作って事業を行なっています。ティッセンクルップ・エレベーターも常熟の民営のエレベーター製造会社と合弁会社を設立しています。富士電機も常熟のナンバー1の電気スイチの会社と合弁会社を作って事業展開をしています。このように、我々は外資企業と地元の民営企業の合弁事業を歓迎します。外資企業が技術を提供し、中国の企業が人材と工場を提供し、市場も開拓します。お互いの強みを生かして、それがうまく融合して中国市場が発展できればと思います。

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