─日本企業に新興国市場を共に開拓しようと呼び掛けてもいます。

 私ども台湾企業は、日本企業よりも意思決定が早く、環境変化に対して機敏に対応してきました。このフレキシブルさは、変化の激しい新興国でこそ生きます。一方、日本企業は一つのことをじっくり極めることが得意です。先日、日立ディスプレイズに訪問した時に在籍20年、30年という人が多かったことからも、それが分かります。こうした異文化の融合が、高い市場開拓力をもたらします。

 先ほど、大型液晶パネル向けガラスにおいて、韓国企業が政府の圧力によって団結したと話しました。同じことを、指導力に乏しい日本の政府ができるでしょうか。日本のテレビ各社がこぞって、そのうちの1社のグループ企業に部材を発注する。少し考えれば、これが現実的ではないことが分かります。

 しかし、受託業者である私どもに発注してもらうという方法ならどうでしょうか。私どもはブラジルに、Samsung社に決して負けない巨大な工場を、近いうちに建設するつもりです。部材から液晶パネル、液晶テレビまでを、一貫生産できるようにします。日本のテレビ・メーカーには、これをぜひ利用してもらいたい。新興国の需要を取りに行かないという選択肢は、今の時代、グローバル企業ならあり得ません。

Terry Gou(郭 台銘) 1950年、台湾生まれ。1971年に台湾の中國海事專科學校 航運管理科を卒業。1974年に鴻海塑膠企業を創業。1982年に社名を鴻海精密工業に変える。

 既に報道されたように、弊社がシャープと大型液晶パネル事業に関して話し合っていることは事実です。2011年6月初めには、シャープ 代表取締役会長の町田勝彦氏と、香港で1日半議論しました。その進捗に関して私は何も言えません。シャープは今や日本でほぼ唯一の大型液晶パネル・メーカーです。私どもも、提携交渉の成功を願っています)。

─スマートフォンなどに向けた中小型液晶パネルにおいて、日本企業とどう組んでいかれますか。ソニーと東芝、そしてHon Hai社と交渉してきた日立製作所が、この分野における事業統合を検討しています。

 この質問に直接回答することはできません。ただし、日本企業が進める事業統合には、課題が四つあるのではないでしょうか。