外資導入と海外投資の2本柱でさらなる成長を狙う

重慶の投資戦略と日本企業への期待をお聞かせください。

王毅氏

 重慶は西部でも外資誘致の最も多い地域となっています。2011年1-8月の外資導入額は36億ドルと、75.6%増加し、伸び率は全国1位だした。「幅広い分野で、全方位的に、多チャンネルから」外資を利用する構図が形成されています。2011年には、ドイツのBASF、台湾のコンパル、マグナグループ、テキストロン(Kautex)、フランスのAXA、スイスのノバルティス、日本のソフトバンク、ジャーディン・マセソンなど、世界企業番付上位500社に名を連ねる企業30数社が新たに進出しています。重慶に進出した世界上位500企業は200社に達し、中西部の都市で最多となっています。

 また重慶は、中国による海外投資のモデル地域でもあります。既に500億ドル規模の海外投資プロジェクトデータベースを構築しています。1-8月の海外投資額は、契約ベースで21億ドル、実行ベースで2億9000万ドルとなり、前年同期に比べ3倍増加しました。粮食集団がブラジルやアルゼンチンなど南米で大豆の栽培や農作物に投資しているほか、重慶鋼鉄や博賽鉱業がオーストラリアやアフリカなどで鉱山開発、工業団地の建設に投資しています。機電集団、軽紡集団などは、ヨーロッパで先進設備を、アメリカ、日本などでハイテク製品を調達しています。向こう5年の外資導入累計額は実行ベースで500億ドルを超え、海外投資累計額は300億ドルを超える見込みです。

 このように重慶は積極的に外資誘致を進め、また積極的に海外投資も行っています。重慶経済技術開発区の中には「重慶日本電機電子産業基地」を建設し、日本企業の誘致を進めていきます。新しく設立した両江新区には様々な優遇策を用意し、誘致を推進します。また今年5月には重慶で「中国西部投資及び輸入消費品展覧会」を開催します。この展覧会は重慶にとどまらず、中国西部を市場と考えた博覧会で、消費品展示会、食品や飲料、住宅や建築材料、その他自動車、オートバイ、旅行関係、買い物関係など、消費にかかわる総合的な展示を計画しています。日本企業も積極的に参加していただき、中国西部地域への投資を検討する機会になっていただければと思います。

 一方、重慶の企業は海外に進出するところも多く、機会があれば、日本で投資し、日本企業と協力して工場を建設することを考えている企業もあります。また年内には成田と重慶を結ぶ直行便も開通します。そうなればこれまでトランジットで8時間かかっていた移動が、4時間へと半減され、一気に日本と重慶の距離が縮まります。今後さらに重慶と日本が協力できる関係を深めていければと思います。

中国第3の新区として注目集める重慶両江新区
両江新区産業マップ
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 重慶両江新区は2010年6月に設立された新区で、上海浦東新区、天津浜海新区に次いで3番目に認可された中国内陸区としては唯一の国家級開発開放新区である。開発区には「都市・農村改革実験区」「内陸地域の先進的製造業と近代サービスの拠点」「長江上流地域における金融センターとイノベーションセンター」「内陸地域の対外開放向けのポータル」「科学的発展モデルの入り口」といった5つのミッションを担っている。いわば西部開拓の拠点ともいえる開発区と位置付けられている。

 1200平方キロのエリアのうち森林を除く600平方キロが開発可能エリアで、現在そのうち150平方キロが開発済みで、残る450平方キロを2020年までに開発する計画だ。現在の基幹産業はノートパソコンの製造とクラウドコンピューティングの2つで、2010年には既に1055億元と重慶の工業生産の13.4パーセントを占めるに至っている。このほか、自動車産業、航空産業、アニメ産業、金融産業にも注力している。フォーチュン500の中の60社あまりが70あまりのプロジェクトに投資していて、その投資規模は重慶市の30パーセントにも上る。

 中国で3つしかない国家級開発開放新区として、他の開発区にはない様々な優遇策が用意されているのも特徴だ。企業所得は15パーセントの低減税率で徴収され、ハイテク企業であれば10パーセントまで低減処置が受けられる。企業所得の地方部分40%は進出の2年間は免除され、さらに3年間は半額となる。企業増値税の地方部分25パーセントも2年間は半額となり、管理団体の個人所得税の地方部分24パーセントが全額返還される。2020年の完成に向けさらに開発が進められる両江新区は、中国でも最注目の開発区といえるだろう。