地下鉄開通で上海から45分でアクセス

 臨海新城は上海に至近という地理的優位性があります。開発はどのように進めていくのですか。

 上海市中心部とここ臨海新城の距離は75キロで、2012年末に地下鉄16番が開通すると45分で上海市とアクセスできるようになります。浦東国際空港からも20キロほどの距離で、車で30分もあれば到着できます。この臨港エリアは自然風景もきれいです。上海近郊にこれほど自然豊かな開発区はほかにはないでしょう。この開発区はもともとが森林や農地があった場所で、それを生かした形で開発を進めているためです。さらに人口湖の滴水湖も新たに建設するなど、市民の憩いの場としてくつろげる環境も用意しました。

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 大学も上海海洋大学、上海海事大学、電気学院という3つが進出しています。ここに移り住んでくる人々が問題なく生活できるように、上海大学人民病院臨港分院も今年から開業します。

 臨海新城には優秀な人材を集める「上海国際人材自由港」を建設しました。ここには、先端技術分野の優秀人材、美術分野の優秀人材、文学分野の優秀人材といったように、各ジャンルの優秀人材を集めてくる計画です。

 このように単に産業だけでなく、働く人も快適に暮らすことができる衛星都市として臨港産業区を開発しています。上海と臨海新城の関係は、ちょうど東京と横浜の関係に似ていると言えるのではないでしょうか。臨海新城には50万平米の住宅団地の計画もあります。臨港産業区に進出する企業の従業員が住むための施設で、物件1件をまるごと企業にレンタルしたり、1フロアや1部屋単位でレンタルできるようにします。総合園区は今年から本格的に建設を進め、2020年には完成させたいと考えています。

環境配慮型企業の進出を歓迎

 どのような業種・業態の企業の進出を希望しますか。また、日系企業にはどんな印象をお持ちですか。

 やはりこれからは新興産業の進出を希望します。ナノテクやマイクロプロセッサの研究開発部門を歓迎します。日本企業はこうした産業分野に強いので、そうした企業は大歓迎です。

 逆に汚染が多い化学工業や紡績工業は望んでいません。この臨海新城は上海にも近く、自然豊かなところなので、どのような業種・業態の企業にせよ、環境に配慮した企業に進出していただきたいです。

 日本企業は環境配慮という面では中国では評判が高いのでその点はあまり心配していません。たとえば既に進出しているYKKAPはこの臨海新城ではとても評判がいいです。YKKAPは低炭素技術を利用して、環境保護を実現しています。外壁は低炭素技術を利用し、排気を吸収できる素材を使っています。また社員にはゴミとなるティッシュの使用を禁止して、ハンカチを使うよう指導しています。こうした取り組みは高く評価します。

上海の10分の1の土地単価も魅力

 臨海新城は上海に近く地理的優勢があるのは分かりました。上海に近い分、土地の価格が高く、進出のネックにはなりませんか。

 このエリアの魅力は、上海に至近であるにも関わらず土地の価格が安い点にあります。ここは1ムー(667平方メートル)あたり19.6万元ですが、これが上海浦東新区や上海金橋輸出加工区になると1ムーあたり200万元というように、ほぼ10倍の価格となります。土地の価格は中央政府がコントロールしているため、地域で勝手に値を付けることはできません。従って、政府の発表がそのままこのエリアの優位性を示しているといえます。

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 そうはいっても、上海近郊のような沿岸部で内陸部に比べて土地の値段も高く、土地の供給も少なく、人件費も高いというのは事実です。このため、ハイテク以外の製造業は本社だけを沿岸部に残して、工場を内陸部に移すという場合が多いようです。ハイテク企業のR&D部門が沿岸部に進出する場合でも、やはり土地の価格が安いに越したことはありません。

 その一方で、ハイテクなどの分野の優秀な人材を集めるには上海から遠いと不利です。沿岸部にしては土地の価格が比較的安く、かつ上海と近くて人材獲得に有利な臨海新城は、日本のハイテク企業進出の第一の候補に挙げられるのではないでしょうか。