2011年の中国経済は、GDPが前年度比9.2%増と2年ぶりに1桁成長に落ち込むなど(2012年1月17日発表の中国国家統計局のデータによる)減速する中、GDPが前年度比12%増と気を吐くのが蘇州市だ。蘇州市の2011年のGDPは1兆500億元(約12兆7575億円)に上り、念願のGDP1兆元超えも果たした。もはや上海、北京、深センという直轄市と肩を並べるまでに成長した。歳入も前年度比22.2%増の1100億9000万元(約1兆3378億円)に達する見込みだ。

蘇州市は旧市街の東に広がる蘇州工業園区と西に広がる蘇州高新区が両輪となって産業を発展させてきた。シンガポール政府と共同開発して先端的なサービス業も視野に入れる蘇州工業園区に対し、蘇州高新区は研究開発や先端的なソフトウエア、アウトソーシング産業に重点を置く。そこで中国共産党蘇州市委員会常任委員で蘇州市の副市長、蘇州高新区の書記でもある周偉強氏に、蘇州市及び蘇州高新区発展のシナリオを聞いた。(聞き手は中田 靖=アジアビジネス本部)

GDP1兆元超えを達成

中国経済が全体に減速する中、蘇州市の経済はGDP2桁増を続けるなど好調です。蘇州市の強さはどこにあるのですか。

周偉強氏
周偉強氏
中国共産党蘇州市委員会常任委員
蘇州市人民政府副市長
蘇州高新区党工委書記

 蘇州市の工業生産額は5年連続で上海に次ぐ2位で、輸出高は6年連続の3位、2011年のGDPは前年度比12%増の1兆500億元(約12兆7575億円)で、歳入も前年度比22.2%増の1100億9000万元(約1兆3378億円)に達する見込みです。蘇州市は2級都市ですが、直轄市の北京、上海、重慶、天津や1級都市の深センに匹敵する実力で、1級都市の武漢、南京を追い抜きました。もはや省レベルのGDPを上回る規模になっています。

 蘇州市の発展は30年前の改革開放政策に始まり、3つのステップで発展してきました。最初のステップでは地元の郷鎮企業(中小企業)が農業から工業へ移行し、上海の企業をサプライヤとして急伸しました。次のステップは92年からの上海浦東新区の開発に伴う外資導入で今に至ります。3つ目のステップは2020年までにゆとりある社会をつくり、2050年までに現代化社会を確立するという政府方針に沿った発展を進めていくというものです。

 この20年の間で蘇州に1万8000社の外資企業の誘致に成功しました。登録資本金は500億米ドル、実際の振込金額は800億米ドルにも達しています。蘇州に登録している外国人の数は10万人に上り、いかに国際化が進んでいるかがわかります。企業の内訳では台湾系が8000社、香港系が3000社ですが、日系はそれに次ぐ2000社で、台湾と香港を除くと一番多い投資が日本から行われています。日本の次に多いのは米国の1000社で、次いで英国、フランス、ドイツが約300社、それ以外にもイスラエル、サウジアラビア、デンマークといった企業が進出しています。こうした積極的な外資導入が蘇州発展の原動力になりました。

「住みやすい蘇州」「起業しやすい蘇州」をスローガンに

第12次五カ年計画では蘇州はどんな戦略を掲げていますか。

 政府が第12次五カ年計画で目指しているのは持続可能な経済の発展です。そこで蘇州では、「住みやすい蘇州」「起業しやすい蘇州」をスローガンにしています。蘇州では既に2010年には江蘇省が作成した指標、つまり市民の収入、教育、医療といった分野の指標をすべて達成しました。さらにこれからは現代サービス業をさらに発展させて、2015年までには基本的な現代化社会を作り上げる方針です。

 蘇州ではまず総合的な経済力を全国トップレベルで走ること、2番目は科学的イノベーションの力を全国トップレベルにすること、3番目は都市と農村の一体化を全国トップレベルにすること、4番目は社会の調和を全国トップレベルにすること、5番目は環境保護を全国のトップレベルにすること、6番目は市民たちの幸福指数を全国トップレベルにすることです。