精密機械・自動車部品産業を強化

 南通経済技術開発区は、これからどのように発展するのでしょうか。

屈宝賢氏

 さらなる発展に向けて、新たな産業基盤の構築に取り組んでいるところです。そのための基本政策が、新たな産業の中心地となる園区を整備する「5+3政策」です。

 具体的には、「製造設備産業」「精密機械産業」「オプトエレクトロニクス産業」「医薬ヘルスケア産業」「新素材」の五つの「製造業園区」に加えて、「能達ビジネス区」「総合保税特別区」「都市型商業集積区」といった三つの「サービス機能園区」を整備する予定です。

 この中で、特に力を入れているのが精密機械産業園区です。新たに500ヘクタールの土地を用意しており、ここに精密機械と自動車部品にかかわる企業を誘致して精密機械産業の育成を図ります。特に高度な技術を抱えた日本の精密機械メーカーや自動車部品メーカーを積極的に誘致する考えです。

 南通経済技術開発区には、すでに精密機械産業や自動車部品産業に従事する大手企業が数多く進出しています。例えば、日本企業と関連するところでは、日本AMCと南通福徳実業有限公司が1997年に設立した中日合弁会社で、高圧継手、油圧機械部品、自動車部品、高圧電気部品など精密機械加工製品の開発及び加工を手掛ける南通愛慕希機械有限公司が拠点を構えています。日立金属が中国の上海宝鋼集団が設立した合弁会社で、鋳造ロールの製造・販売を手掛ける宝鋼日立金属軋輥(南通)有限公司の拠点もあります。2011年9月には、アイシン精機が自動車部品の開発会社「愛信(南通)汽車技術中心有限公司」を設立しました。

進出企業に様々な優遇策を用意していると聞いています。

 南通経済技術開発区で研究開発を行う企業や、新しい産業を立ち上げようとする企業などを支援するための様々な優遇策を用意しています。いずれも、引き続き強化する方針です。例えば、産業の育成に向けた奨励金は2011年に5000万元も提供しています。2012年は、この奨励金を少なくとも20%は増やす方針です。また産業を支える人材の育成にも力を入れており、このための奨励金も提供しています。2011年は、3000万元を用意しましたが、2012年以降、毎年20%程度増やしていく方針です。

強力な電力供給体制が強み

 南通経済技術開発区における電力の状況を教えて下さい。

 日本企業の皆さんに、是非知っておいていただきたいのは、南通子経済技術開発区は中国の中でも特に電力に恵まれていることです。この地域は、中国におけるエネルギー戦略の重点地域の一つになっています。

 南通経済技術開発区は、中国最大の電力網である華東電力網から電力の供給を受けています。今後、建設を予定している発電所を含めると電力の供給能力は1000万kWに及ぶ予定です。このほかに、太陽光や風力などの新エネルギーを利用した発電設備からも10万kWの電力の供給を受けることができます。開発区内の電力設備の強化も図っており、220万Vの変電所を6基、11万Vの変電所を11基、新たに建設する予定です。年間を通じて安定して電力を供給できる体制が整っていることは、企業の競争力強化に役立つはずです。企業からの申請があれば24時間休まず電力を供給することもできます。

 南通経済技術開発区は、従業員の皆さんが、豊かな生活ができるように、住まいや日常生活を支える様々なインフラの拡充も図っています。こうして単に様々な産業を集積するのではなく、産業を育む環境が整った「新産業都市」へと発展させる考えです。