東日本震災後に動き出した新たな関係

 日本企業の進出ラッシュは最近も衰えていないのですか。

 実はここ数年、日系企業による中国への投資が減少したというデータがあり、中国への進出熱が冷めたという分析が広がりました。現に私もこの2年間は日本へ行っていませんでした。しかし、昨年3月に発生した東日本大震災で、その傾向に変化が出てきました。日本企業としても、また中国政府としても、お互いに投資についてもう一度考え直しましょうという機運が広がってきたのです。それは昨年夏に日本企業のタイ工場を襲った洪水でさらに拍車がかかりました。

 私は日本の製造業の投資熱が下がってきたときに、もう既に日本の海外移転が一巡したものだと思っていました。でもそれは誤解でした。日本はまだ重要な技術の海外移転やリスク分散が不十分であったことが、こうした一連の災害で浮き彫りになったのです。今後は重要な部品の製造も複数の海外工場に分散したり、R&D部門についても海外に移すなど、さらなるリスク分散が必要になると思います。

 中国政府は2011年からの12次五カ年計画において、新興戦略産業に注力するという方針を掲げており、ハイテクの領域でも投資が活発になっていきます。その中でハイテク分野で先行している日本企業が大きな役割を担えると考えます。中国と日本は一衣帯水の隣国で地理的にも有利です。お互いに不足している部分を補うことができるのです。中国は人口も多く、市場も広いので、これからも長期的な発展が続くと思います。ですから、お互いの合作のポイントをきっと見つけることができるはずです。

第12次五カ年計画で期待高まる日本企業のハイテク投資

 第12次五カ年計画において、日本のハイテク企業が果たせる役割をもう少し詳しく教えてください。

タイトル

 政府が掲げる新興戦略産業は、省エネ・環境保護、次世代情報技術、生物医薬、新エネルギー、新素材、新エネルギー車の7分野です。これら7つの産業すべてにおいて、日本企業は優位性を持っています。最近進めている日系企業とのプロジェクトの中で、電気自動車のデバイスの投資などもありました。

 このほか7つの産業の中では次世代情報技術にも注力します。中国最大のショッピングサイト「タオバオ」を運営する淘宝天下は、アリババと浙江日報報業集団の合弁会社です。こうした強みを伸ばすためにも、ECを始めとするインターネット技術への投資も歓迎します。

 また杭州は歴史が長く、文化都市としても有名です。そこで都市発展計画の中に、こうした文化的な要素を加えていければと思います。その一つがアニメ産業であり、ゲーム産業です。どちらも日本企業が強みを持っているので、是非、そうした分野への進出も希望します。