コンクリートポンプ車

 東日本大震災に伴う福島原発事故で原子炉の冷却に使われた62メートルの巨大なブーム(アーム)を持つコンクリートポンプ(生コン圧送機)車(通称、大キリン)を寄贈したことで一躍名を馳せたのが、中国最大の建設機械(建機)グループである三一集団だ。

 三一集団は、コンクリートポンプ車や港湾機械を製造販売する三一重工を中核に、油圧ショベルを製造販売する三一重機、三一重装、三一電気などから構成される建機グループ。建機全体では世界第11位だが、コンクリートポンプ車では世界ナンバー1のシェアを誇る。1989年に梁穏根氏(現会長)、唐修国氏(現総裁)、袁金華氏、毛中吾氏という国有企業にいた4人によって中国湖南省長沙に設立されたまだ新しい会社である。

唐修国氏
唐修国氏
三一集団 総裁

 梁会長は2011年の米フォーブス誌の中国富豪ランキングでトップに選ばれるなど、グループの業績に裏打ちされた成功を手にしている。三一集団は昨今の中国の建設ブームに乗って売り上げを伸ばし、2012年には1000億元(約1兆2150億円)の売上高を目指す。グループのブランドである「SANY」は日本でも知られるようになった。その三一集団が、コンクリートポンプ車や港湾機械で日本市場に本格参入する。そこで三一集団のナンバー2である唐修国総裁(48)に、三一集団の海外戦略及び日本市場への取り組みを聞いた。(聞き手は中田 靖=アジアビジネス本部)

2012年は前年比30%増の1000億元の売り上げ目指す

 三一集団は5年で約10倍に売り上げを伸ばすなど高い成長を続けてきました。2011年の分析と2012年の見通しをお聞かせてください。

唐総裁 三一集団は2010年は502億元(約6099億円※1元12.15円で計算)を記録し、2011年は770億元(約9356億円)を見込んでいます。しかし、2011年の売り上げを細かく見ると、1月から5月までは予算比110%を記録していたのに対し、6月以降は予算比90%で推移しています。これは高騰する住宅価格の引き下げのために2011年春から不動産投資規制が始まったことや、2011年7月に起こった高速鉄道事故に伴う鉄道建設の投資抑制策を受けて、建設市場が冷え込んだのが理由です。

 2012年の前半はまだ市場の冷え込みは続く見通しですが、後半は上昇に転じる見通しです。とはいえ、中国の建機市場は2011年前半までのような高い成長は期待できないかもしれません。それでも2011年比30%増の1000億元(約1兆2150億円)の売り上げを目指します。