2011年3月11日に起きた東日本大震災をきっかけに、家庭用燃料電池に対する認識が大きく変わり始めた。原子力発電所の事故によって全国各地で深刻な電力不足が懸念され、家庭用燃料電池「エネファーム」が飛ぶように売れているのである。2011年度分として用意した84億円の補助金は、8133台分の申請を受けた同年7月7日の時点で底を突いた。

 だが、勢いは止まらなかった。「補助金がなくなった後でも、購入する人はいる」(あるガス会社)というのだ。補助金なしで約270万円前後もする機器が売れ続けたのである。

補助金が復活し、高効率なSOFCがいよいよ登場


 そして2011年10月3日、エネファームの補助金が復活した。2012年1月31日までを「第2期」として、エネファームを対象にした「民生用燃料電池導入支援補助金」の募集を開始したのである。第2期の補助金の上限は、支給先を増やす狙いもあり第1期の105万円より20万円少ない85万円に設定した。原資は39億円を確保した。
2011年10月17日に販売を開始したSOFC型のエネファーム
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 このように燃料電池業界に追い風が吹く中、攻勢を掛けているのがJX日鉱日石エネルギーである。同社は2011年10月17日、家庭用として世界で初めてとなる固体酸化物形燃料電池(SOFC型)の販売を開始した( Tech-On! 関連記事)。SOFCは、製品化で先行する固体高分子形燃料電池(PEFC型)に比べ、小型で発電効率が高い特徴がある。

JX日鉱日石エネルギー 常務執行役員 新エネルギーシステム事業本部長の荒木康次氏
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 東日本大震災をきっかけにした燃料電池業界の変化や家庭用燃料電池が社会に浸透することによるメリット、そしてSOFCの利点とは何か――。日経BP社が2011年10月24日から開催される「 Smart City Week2011」で講演頂く、JX日鉱日石エネルギーの荒木康次氏(同社 常務執行役員 新エネルギーシステム事業本部長)にエネファーム事業への取り組みを聞いた(荒木氏の講演は10月26日の13:10から)。