中国のFPD産業が立ち上がり始めた。中国各地で大型基板を用いた液晶パネル工場の建設が相次いでいる。一見すると華やかな中国のFPD業界だが、課題も多い。世界のFPD産業は低迷が続いており、世界トップを争う韓国のSamsung Electronics社やLG Display社でさえ、赤字の状況にある。しかも、需要が盛り上がらないまま中国メーカーの液晶パネル工場が立ち上がることで、パネルの供給過剰はますます深刻になる可能性が出てきている。国内に膨大な市場を持つとはいえ、後発ゆえに技術や産業チェーンの面で立ち後れている中国のパネル・メーカーの今後は、決して安泰とは言えない。そこで、中国FPD産業の健全な発展を目指す業界団体「中国光学光電子行業協会 液晶分会」のキーパーソンで、2010年11月にもインタビューした梁新清氏に、中国FPD産業の現状や今後の課題、日本の技術や業界に対する期待などについて再び聞いた。(このインタビューは2011年7月25日に行った。聞き手は、田中 直樹=Tech-On!)

――中国FPD産業の現状をどう見ていますか。

中国光学光電子行業協会 液晶分会 秘書長(BOE Technology Group社副董事長)の梁新清氏
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 前回インタビューにお答えした2010年11月から現在までの間に、中国FPD産業は大きく変わりました。

 2010年は、中国のどこに産業の拠点を置くか、全体の設計図を描く年でした。まだ場所を選んでいる状況でした。その結果、北京周辺、上海などの長江デルタ、広東省の珠江デルタ、成都、合肥といった中西部地域に、FPD関連企業が集積するFPD産業基地が生まれました。

 2011年は、これら四つの地域で、液晶パネル工場の建設や、装置・部材メーカーの誘致が具体的に動き始めました。例えば、珠江デルタ地域の深センでは、中国TCL社の第8.5世代ラインの建設が進んでいます(編集部注:その後、2011年8月9日に稼働した)。長江デルタ地域の南京では、中国Panda社とシャープの合弁会社の第6世代ラインが、2011年3月に稼働しました。

 長江デルタ地域では、韓国Samsung Electronics社の第7.5世代ラインの着工が2011年6月に始まりました。そして6月22日には、台湾行政側が台湾AU Optronics(AUO)社に対して、中国での第8.5世代ラインの投資を許可しました。AUO社は昆山市と合弁会社を立ち上げ、2012年下期に量産を開始する予定です。

 製造装置や部品・材料などの周辺企業の投資も活発です。例えば、東京エレクトロンが昆山にある製造装置工場を正式にスタートさせました。米Corning社が北京にガラス基板の工場を稼働させています。旭硝子は昆山と深センにそれぞれガラス基板工場を建設中です。このほかに数多くの製造設備や材料のプロジェクトを立ち上げています。これらの動向は、中国が世界FPD産業の注目するホットな地域となっていることを証明しています。

――中国FPD産業の今後の発展に向けた課題は。

 全体的に見ると現在の中国FPD産業は華やかですが、この中に課題が潜んでいます。主に三つの課題があります。