藤田俊弘氏(右)と佐川浩二氏(左)
藤田俊弘氏(右)と佐川浩二氏(左)
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 産業向け制御機器の業界団体である日本電気制御機器工業会(NECA)が、国際標準化などを軸に欧州との連携を深めている。その背景には、標準化の重要性に気付いた中国への危機意識がある。欧州と連携する意義について、NECA制御安全委員会委員長の藤田俊弘氏と技術委員会委員長の佐川浩二氏に聞いた。(聞き手は、高野 敦=日経ものづくり)

――欧州との連携として、どのようなことをしているのでしょうか。

藤田氏:もともと規格の策定では協調してきましたが、今後はその幅を広げたいと思っています。2011年2月には標準化に関するシンポジウム*1を大阪と東京で開催します。欧州の先進企業を招くことで、日本の企業に国際標準化の重要性を認識してもらうことを狙いました。1回目のテーマは既に連携の実績がある標準化ですが、模倣品対策や制御安全、環境対策なども採り上げたいと思っています。

*1 「国際標準化シンポジウム」と題したイベントを、2011年2月7日に大阪大学中之島センターで、同月9日に慶応義塾大学三田キャンパスで開催する。参加は無料。詳しいプログラムや参加の申し込みは、NECAのWebサイトを参照。

――欧州は、国際標準化で一日の長があります。なぜ日本に協調を呼び掛けているのでしょうか。

藤田氏:欧州はこれまで中国に対して産業分野の指導を行ってきましたが、昨今のさまざまな問題もあって、本当にそれで良かったのか、かなり悩んでいるようです。やはり、日本と協調した方がいいのではと思い始めている。

 国際標準を作ることの重要性に中国も気付きました。ある意味では、良い製品を造ること以上に重要なのです。近年、中国が標準化を議論する場に人をどんどん送り込んできている。一般に中国人は、内容を分かっていようが分かってなかろうがとにかくどんどん口を出してきます。一方的に自分たちが有利になる状況をつくり出そうとしているわけです。そうした状況を、欧州は非常に問題視しています。

――NECAはこれまで、どのような標準化活動を行ってきたのでしょうか。

藤田氏:NECAも10年ぐらい前までは、国際規格が発行されてから対応を開始する「フォロー型」に終始していました。標準の作成に着手したのは、2002年ぐらいからです。

 現状で日本が作成したと胸を張っていえる規格はパワーリードスイッチやイネーブルスイッチ、制御機器分野の安全ネットワーク、LED表示灯など4つにとどまっています。しかし、今後はセーフティアセッサ(NECAが推進している安全技術資格)や直流給電なども規格化を主導したいと思っています。自ら動く「プロアクティブ型」の取り組みが成功しつつあります。

佐川氏:制御機器は輸出が多いので、「国際規格に対応するのが当たり前の業界ではありました。とはいえ、規格が出てから対応するのでは、間に合わない。規格が決まる前にもの申したり、規格そのものを作ったりしないといけないのです。

 実際、思わぬ規格の発行によって足をすくわれた事例があります。センサの配線の色に関するIEC規格です。

「暗黙の了解」は通用しない