自社の特許を守るためなら,訴訟も辞さず。企業が知的財産戦略を重視するようになるとともに,他社から特許の侵害で訴えられるリスクも増している。そんなリスクを封じる手段として,該当する特許を無効にすることで損害賠償を回避する戦術を採り上げる。 (浅川 直輝=本誌)

黒田 健二
黒田法律事務所 黒田特許事務所
弁護士

 2005年7月14日,最高裁判所第一小法廷で,世間の注目を集めていた,ある訴訟が事実上決着した。パチンコ店に設置したスロット・マシン,いわゆるパチスロのメーカーであるアルゼが,1999年にパチスロの機能の1つ「チャレンジ・タイム」に関する特許(特許番号:1855980,以下CT特許)を侵害したとして同業者のサミーとネットを訴えた,いわゆる「パチスロ特許訴訟」である。

 この訴訟が世間の耳目を集めた理由の1つは,その賠償額の大きさにある。2002年3月,東京地方裁判所は,計84億円の損害賠償をサミーとネットに命じた。当時の国内における知的財産訴訟では過去最高となる金額である。