交流100Vなどの電力供給用線路(電力線)に高周波信号を重畳し,それを搬送波として信号(データ)を伝送するもの。国内では関東で50Hz,関西では60Hzで電力が供給されているが,この電力線に10kHz~450kHzの信号を搬送波として重畳する。電話回線に高周波信号を重畳するADSLと考え方は同じだ。現行の規制で利用帯域が450kHzまでとなっているのは,それ以上の周波数帯を使う各種の通信・放送サービスに対する電波の混信を防ぐ狙いからだった。

 電力線データ通信の歴史は古い。日本でも1918年には,当時国内最大級の発電量を誇った栃木県の下滝水力発電所で,東京の変圧所との間を結ぶ電話システムに利用されたという。小容量データの伝送用途では,1960年代に電力会社が,深夜電力利用の電気温水器制御や大口ユーザーのメーター読み取りに導入した。ただし,当時は数ビット/秒の低速だった。これ以降,高速化に挑むことになるが,そのたびに電波法関連の規制が立ちはだかることになる。