日経ものづくり 中国的秘密・日本的秘策

第10回
コピー商品分解のススメ
そこは中国式コスト削減策の宝庫

コピー商品はすぐに入手して分解すること。外観は同じでも,中身は全く違うはずだ。日本製の高価な部品は,できる限り安価な中国製の部品に置き換えられている。さらに,作業効率を高めるための部品は削除され,その分煩雑な作業を人が行っていることが分かる。こうした情報は日本メーカーにとっても有益だ。(本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


「貴社のコピー商品が日本で売られていますよ」
 ある顧客から,こんな情報が私たちの会社に飛び込んできました。それまでにも,私たちの会社が開発したある産業用製品のコピー商品を中国メーカーが造り,中国市場で販売していたことはあるのですが,日本市場では聞いたことがありません。慌てて調べると,すごいことが分かりました。
 なんと,コピー商品を販売していた会社は,日本メーカーのA社。私たちの会社の同業者です。従来,私たちの会社とA社とは,互いに手掛ける製品群が異なっており,うまくすみ分けてきました。ところが,業界全体の低迷を受け,A社はなりふり構わない戦略に打って出てきたのです。それはまさに禁じ手。つまり,A社は中国メーカーが違法に造ったコピー商品を日本市場に持ち込み,自社ブランドとして低価格で販売することに手を染めたのでした。
 当時私は,そのコピー商品の元となった私たちの会社の製品(オリジナル製品)の後継機種の設計を担当していました。その関係もあって,早速私はA社が販売するコピー商品を取り寄せ,中身を調べることにしたのです。

安い部品への置き換えを徹底
 コピー商品は,筐体の色が違うだけで,外観はオリジナル製品にうり二つでした。ねじを一つずつ外して内部を見ても,構造から基板の形,部品の配置に至るまで,オリジナル製品とほとんど同じように造られていました。試しに,オリジナル製品とコピー商品とで各部品とを入れ替えていくと,なんとピッタリと勘合。あまりにも露骨な模倣具合に,腹立たしさを通り越して,笑ってしまうほどでした。
 ただし,細部を見るとオリジナル製品とコピー商品の品質の差は歴然。コピー商品の部品の精度は著しく低かったのです。例えば,オリジナル製品において部品の脱落を防ぐために造った溝やつめを,コピー商品では奇麗に加工することができず,かえって邪魔になったとみえ,小刀で削り取ったり,金型上で削除したりしたと思われる所がたくさん見つかりました。