1Hz当たりの伝送速度を0.7~0.8ビット/秒から4ビット/秒へと一気に引き上げて,最大1Gビット/秒の無線通信を実現する−−。第4世代携帯電話(4G)を始めとする次世代ケータイ構想の具体化に向けた検討が進み始めた。「シャノン限界」を乗り越えるために,MIMOなど最新の伝送技術を総動員することが前提となる。携帯機器のように限られたハードウエアで処理するためのアイデアが続々と登場している。

第1部<無線方式>
高効率化に「空間」を利用
2つのカベを乗り越える

次世代のモバイル通信の目標が定まった。1つは周波数利用効率を向上すること。空間を有効活用することでビットレートを1ケタ上げる。もう1つが,遅延時間の短縮である。1ケタ下げれば新しい用途が開ける可能性がある。 モバイル通信以外に共通する技術も少なくなく次世代に向けた取り組みはメーカーの技術蓄積になる。

第2部<信号処理>
4Gを狙う要素技術群
課題は演算量の削減

1Gビット/秒や高速移動時で100Mビット/秒といった4Gの目標を実現するには,信号処理の各技術で大幅な進展が必要になる。これまでは,処理性能を上げると演算量が爆発的に増えるというジレンマを抱えていた。最近になって,ブレークスルーが相次ぎ,演算量増大という課題を大きく軽減しつつある。4Gに向けた研究開発がテクノロジー・ドライバとなって次世代の信号処理技術群が生まれようとしている。

第3部<RF回路>
パワー・アンプに変革迫る
回路/デバイス技術を総動員

OFDMやMIMOの採用を前提とする次世代の移動体通信では通信方式の検討に加えて,RF回路のさらなる技術開発が必要になる。OFDMを使ってデータ伝送速度を高めると,RF回路の消費電力の増大を招くからだ。これまでOFDMは無線LANに実装され,無線通信技術としての実績は積んでいる。しかし移動体通信への実装は,無線LANに比べてはるかに困難になる。とりわけパワー・アンプの消費電力に対する懸念は大きい。電力付加効率を向上させるために歪み補償技術などの回路技術や,信号処理技術を取り込んでいくことが必須になる。