日経オートモーティブ この会社・この技術

東洋システム
2次電池の評価技術でハイブリッド車の開発を後押し

昔は当たり前だった肩掛け式の携帯電話機。計測機器メーカーの一社員は、電池の改良で携帯電話機を無線機並みに小型化できると考えた。そのためには精度の高い評価装置が必要と考えた彼は、電池の評価装置を開発する東洋システムを立ち上げた。携帯電話機、そしてパソコンが進化するのに合わせて会社も成長した。そして今ではハイブリッド車を中心に、自動車向けの評価設備でも大きなシェアを占める。

 車両安定制御システムやハイブリッド機構など、自動車で電子制御の技術が重要になってきている。中でもハイブリッド車には、モータや電力制御部品、2次電池やキャパシタなど、従来の自動車分野になかった技術が要求されている。
 2次電池の開発における重要な要素として、評価方法の確立がある(図)。電池の研究開発に使う分析装置で、国内50%以上のシェア(同社推定)を誇るのが福島県いわき市にある従業員50人のベンチャー企業、東洋システムだ。
 「評価装置の設計は、この抵抗とあのコンデンサを組み合わせればいい、という単純なものではありません。素子の種類や配置を変えるなど、現場での試行錯誤の積み重ねがものをいいます」(東洋システム社長の庄司秀樹氏)。
 2次電池の評価装置の設計では、ある日突然起きる技術のブレークスルーを期待しても意味がない。経験則に基づいて良いと思われる設計を片っ端から試作して、最適な手法を見いだすことこそが唯一の問題解決策となる。
 1985年、当時勤めていた計測器メーカーで肩掛け式の携帯電話機を見た庄司氏は、電池をコンパクトで高容量にできれば、無線機並みに小型化できると考えた。そして2次電池の研究開発が進むためには、精度の高い評価装置が必要だと気付いて「社内企業家活動」として申請した。しかし当時は半導体景気の真っただ中で、余裕はないと上司から突き放されてしまう。あきらめ切れなかった同氏は、1989年に会社を辞めて東洋システムを設立する。

日経オートモーティブ この会社・この技術
図●2次電池を扉の中に入れて充放電特性を評価する
温度を−40~100℃まで変化させる。万が一爆発したときのために、横に空気抜きがある。