日経オートモーティブ 新車レポート

HONDA Stepwagon/NISSAN Serena
日常と非日常
同じ市場に対照的な2台

小型化と大型化、平日と週末、
お母さんとお父さん、シンプルさと多彩さ。
同じカテゴリーに属する競合車種なのに、
こんなに方向が異なるのも珍しい。
2005年5月下旬に相次いで登場した
ホンダの新型「ステップワゴン」と
日産自動車の新型「セレナ」。
どうしてこんなに違うのか。
その背景を紹介しよう。


 新型ステップワゴンの開発責任者である本田技術研究所栃木研究所LPL室主任研究員の蓮子末大氏は「ミニバンはもはや普通のクルマ」だと語る。過去2代のステップワゴンは、「子供と一緒にどこに行こう」という初代のキャッチフレーズが象徴するように、「楽しい週末を演出するクルマ」としての位置づけが強かった。ところが、ミニバン市場が成熟し、「週末の道具」というよりも「日常の足」としての色彩が強くなってくると、ミニバン選びの基準も変わってきた。
 「ミニバンを運転する機会が最も多いのは普段家にいる女性。今回最も着目したのはこうした女性たちのニーズだった」(蓮子氏)。
 子育てや近所付きあい、習い事、子供の送迎などで忙しい毎日を送る女性たちの最も強いニーズは「楽になりたい」「リラックスしたい」というもの。しかし従来のこのクラスのミニバンは通常のセダンに比べて車体が大きくて扱いにくく、操縦安定性や乗り心地、静粛性でも劣る点が目につく。
 そこで今回のステップワゴンは、従来並みのスペースは維持しながらも、「セダン並みの走りの質」を目指した。専用の低床プラットフォームを新開発して重心を下げ、全高も75mm低くして乗り心地や操縦安定性を向上させるとともに、従来より全長を45mm短縮するなど車体をやや小型化して取り回し性を向上させた。このため実車はかなりコンパクトに見える。
 「車体が大きく見えると、女性の中には『私には運転できない』としり込みしてしまう人も出てくる。『これなら私にも運転できそう』と思ってもらうのが狙いだった」(蓮子氏)。

日経オートモーティブ 新車レポート
図●ホンダの新型「ステップワゴン」(左)と日産の新型「セレナ」(右)
同じカテゴリーのミニバンであるにもかかわらず日常での使い勝手を重視したステップワゴンに対し、セレナは週末の楽しさを重視するなどコンセプトは対照的。