日経オートモーティブ Key Person

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新日本石油常務
執行役員 研究開発本部長

松村 幾敏氏

1970年3月東京工業大学大学院工学部理工学研究科(修士)修了、同年4月日本石油精製(当時)入社、1993年3月開発部副部長、2000年6月取締役技術開発部長、2004年4月取締役新エネルギー本部副本部長兼研究開発本部開発部長、2004年6月より現職。


 ガソリン乗用車からディーゼル乗用車への転換を促すことは、単に車両の燃費を向上させてCO2を削減するだけでなく、燃料精製段階でのCO2排出を減らし、石油資源を有効活用することにもつながる——。石油業界で、ディーゼル乗用車の導入に前向きな発言をしている新日本石油常務の松村幾敏氏に、同氏がなぜディーゼル車の導入に積極的なのかを聞いた。 (聞き手は鶴原吉郎)

——2004年7月から7回にわたって開催された経産省の「クリーンディーゼル乗用車の普及・将来見通しに関する検討会」の委員として、ディーゼル乗用車の普及に積極的な意見をしています。
 かつてガソリンと軽油の国内需要が年間5000万tずつでほぼ拮抗していた時代があるのですが、現在ではガソリン車へのシフトが進み、ガソリンの年間需要6000万kLに対し、軽油が3900万kLと大きくアンバランスになっています。もしガソリンの需要を400万kL減らし、その分の輸送力をディーゼルで肩代わりしたと仮定すると、軽油需要は290万kLしか増えずに済むと我々は試算しています。

——軽油需要の増加分がガソリン需要の減少分より少ないのは、ディーゼル車の燃費がいいからですか。
 そうです。ガソリンよりも軽油のほうが生産量が少なくて済むうえに、ガソリンを製造する際に排出されるCO2のほうが軽油を製造する際に排出される量よりも多い。燃料需要のディーゼルシフトによって、燃料製造段階でのCO2排出量は187万t削減できると見ています。さらに、ディーゼル車のほうが燃費が良いので燃料消費段階でも186万tのCO2が削減できる。つまりガソリンの需要を400万kL ディーゼルにシフトするだけで、トータルで373万tのCO2排出量を減らすことができるわけです。