変動する電源電圧 解析と対策の両輪で制する
 本来一定であるべきLSIの電源電圧が変動してしまう。電源配線の設計に頭を悩ます機器設計者が増えてい る。電源電圧が不安定なことが原因で,LSIが誤動作したり,プリント配線基板上で信号波形の歪みによる伝送 誤りが多発したり,EMIが許容値を超えてしまったりといったトラブルが,そこかしこで頻発している。

第1部<必然性>
+1V時代の電源配線設計
オンチップ化で乗り切る

デジタル回路と電源回路(DC-DCコンバータ)が1チップにまとまる。電源電圧の低下によって深刻化するLSIの電源電圧の変動を最小限に抑えるために,デジタル回路とDC-DCコンバータを最短距離で結ぶ。コンデンサなどの対策部品をふんだんに搭載して問題を抑え込む旧態依然とした電源配線の設計手法と決別する絶好のチャンスになる。電源回路のオンチップ化は,65nm世代の携帯電話機向けLSIから始まり,パソコンや据置型デジタル民生機器向けの高速LSIに裾野を広げていく。

第2部<解決策>
スイッチング周波数は数百MHz
L/Cの小型化で電源回路集積へ

深刻化する電源電圧変動を抑え込むために,いよいよ電源回路にメスを入れる時が来た。デジタルLSIの低電圧化・大電流化に対処するには,電源回路であるDC-DCコンバータを,丸ごとチップ上に形成するのが最善の方法だ。製造技術の微細化にひた走り,電源電圧の変動に苦しむ一部の半導体メーカーは,こうしたオンチップ電源の検討に本格的に乗りだしている。さらに電圧の安定化制御の仕組みに,デジタル制御による高度な制御理論を導入することも,変動幅の低減に寄与する。