IBM社は強いのか弱いのか
 米IBM Corp.の半導体事業が岐路に立たされている。Cu配線,ひずみSiといった競合他社の度肝を抜く先端技術の実用化に先鞭をつけてきたIBM社は,ここ数年も,半導体関連の学会で耳目を集める発表を数多く行っている。2005年6月に京都で開かれた国際学会「2005 Symposium on VLSI Technology」でも同社の発表は8件と,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.に次いで2番目に多かった。中でも初めて明らかにした65nm世代のSOIプロセスの詳細や,p型トランジスタとn型トランジスタで基板の結晶方位を変え駆動能力を高める技術の発表に,参加者の注目が集まった。

第1部<戦略の検証>
組み込み市場に活路
技術開示で仲間づくり

産業界を驚かせた米IBM Corp.と米Apple Computer,Inc.の決別。その背景には,半導体事業の見直しを迫られているIBM社の事情があった。目指すのは,強みとする自社のプロセス技術を生かせる組み込み機器向け市場におけるシェア拡大である。家庭用ゲーム機市場の獲得はその通過点にすぎない。限られた開発リソースを有効利用するにはパソコン向けマイクロプロセサ市場からの撤退は既定路線だったのか。

第2部<技術の検証>
2010年まで抜かりなし
新たな一手に強い自信

1997年発表のCu配線や,1998年のSOI技術,そして2001年のひずみSi…。過去10年間に米IBM Corp.が実用化を宣言したCMOS技術は常に衝撃的だった。微細化だけでは電気特性を高められなくなったCMOSでは,同社が世に出してきたような突出した技術が必要不可欠になる。半導体の主要な学会における同社の発表件数は10年で約4倍になるなど,新しい技術を研究し,いち早く実用化しようという姿勢はますます強まっている。果たしてIBM社は,いかなる次の一手を打とうとしているのか。