日経ものづくり 開発力強化の方策

最終回 プロジェクト内の情報共有

目的に応じた情報を出さないと
コラボレーションは成功しない

北山 厚
アイティアイディコンサルティング
シニアマネージングコンサルタント

製造業の開発力を強化するためのポイントを,設計者の声から探ってきた本連載も今号で最終回。コラボレーションを成功に導くための情報伝達,情報共有を中心に話を進める。アンケートからは,コラボレーションのための仕組みづくりが,満足にできていないという実態が浮かび上がった。部門内外で情報をうまく共有するためには,情報を伝える相手,さらには場面を考慮して,情報の形を変えていかなくてはならない。(本誌)


 前号まで2回にわたって,設計者約2000人の声からあぶり出された開発力向上のポイントを紹介してきた。1回目は開発プロジェクトのスタート時期の重点項目を,2回目はプロジェクトの実施段階における効果的な運営方法を述べた。
 最終回となる今号では,設計者の中でもメカやエレキなど担当が違うことで生じる意識の差を検討した上で,組織内外での情報のやりとり,情報共有に焦点を絞って,開発力を向上するためのポイントを探っていく。また調査結果の総括もしたい。

メカ設計は手配に改善の余地
 前号からの繰り返しになるが,アンケート調査では開発力の評価項目を71個に分けており,その全項目について設計者一人ひとりに評価してもらっている。71項目に対して,プロセスの実行状態レベルとプロセス・手法の定義レベル,またその中の29項目についてはツール・インフラの環境整備レベルについても尋ねて,5点満点で評価してもらった。
 評価を依頼した設計者は,大きくメカ担当とエレキ・ソフト担当とに分けられる。担当が違うことで差があるかを調べるため,評価項目のすべてにおけるプロセスの実行状態レベルの評点の平均値を比較してみた(図)。
 両者で明らかに差があった項目は,詳細設計カテゴリの中の「意匠性検討」だ。エレキ・ソフト設計者の評点がメカ設計者に比べて0.5点以上上回っている。これは,意匠性検討を行う際の,両者の業務の差によって生じた結果だと推定できる。
日経ものづくり 開発力強化の方策
図●メカ設計者とエレキ・ソフト設計者で評点を比較した結果
71個の評価項目のすべてにおいてプロセスの実行状態レベルの評点を比較してみた。おおよその傾向は一致しているものの,詳細設計カテゴリの中の「意匠性検討」および手配カテゴリの幾つかの項目は,メカ設計者に比べてエレキ・ソフト設計者が高い点数を付けている。