ノート・パソコンや携帯電話機への搭載に向け,機器メーカーが開発にしのぎを削る携帯機器向け燃料電池。中でも,燃料にメタノールを使うダイレクト・メタノール型燃料電池(DMFC)は,燃料から水素を取り出すための改質器が不要なことから小型化に有利とみられ,多数の企業が開発に手を染める。しかしここへきて,DMFC以外の燃料電池に関する取り組みが活発化し始めた。

 理由の1つは,DMFCの能力への懸念である。具体的には,瞬間的に取り出せる電流の大きさを示す出力密度が低いことだ。単位面積当たりで比較すると,現状のDMFCの出力密度はメタノール改質型や水素ガス型に大きく劣る。出力密度が低いと,ノート・パソコンの立ち上げ時や携帯電話機の電波送信時など,瞬間的に大電流が必要となる用途に適用しづらい。このためDMFC単独では,ピーク電流の低い携帯機器への適用にとどまる可能性が指摘されている。