第1部<奮闘>
成熟させないワザを編み
モノづくりにこだわる

「成熟商品」といわれて久しい,冷蔵庫や洗濯機などの白物家電。いずれの製品も,普及率はほぼ100%に届いている状況だ。それでも新しい特徴を備えた製品が続々登場し,売り上げを伸ばしている。「白物家電は,まだまだ成熟していない」とするメーカー側はユーザー自身も気付いていない潜在ニーズをあぶり出しあの手この手で購買意欲を刺激する製品の開発に取り組む。そこには国内でのモノづくりに対する危機感も強く働いている。

第2部<事例>
分かりやすく
基本性能をとことん追い求める

 消費者が白物家電に要求する基本性能の水準は,とどまるところを知らない。家電メーカーによれば,冷蔵庫ならば低消費電力や収納性,脱臭,洗濯機ならば洗浄力や節水性といった項目に対する要望が相変わらず高いという。こうした基本性能への要求に応えれば,派手さはないが消費者に分かりやすく訴求することができる。

使いやすく
かゆいところに手が届くまで

 「使いやすさ」を訴える白物家電が増えてきた。例えば,高齢者や障害者だけでなく,健常者にとっても使いやすいことをうたう「ユニバーサル・デザイン」をほとんどの家電メーカーが取り入れている。核家族化や女性の社会進出がさらに進んだり,高齢化社会に伴って独居老人が今後増えたりすれば,老若男女を問わず家事にかかわる必要性が生じる。「誰でも使える」白物家電への需要が高まることだろう。

くすぐる
業務用技術の応用で琴線に触れる

 業務用機器で培われた技術を家庭用機器に取り入れることで,消費者への訴求効果を狙う製品が登場している。プロが使っているものと同様のものを使えば,プロ並みの結果を得られるのではないかという夢を,白物家電メーカーが消費者に与える。業務の現場で使われているなら既に効果は検証済みという,安心感や信頼感もあるようだ。

驚かす
目新しい機能の付加で魅せる

 機器に対する固定概念を覆す新機能を搭載した製品を作ろうと,各メーカーは知恵を絞る。白物家電開発の自由度は高く,いろいろな機能を取り込む余地はまだまだありそうだ。

うならせる
学術的に効果を裏付ける

 第三者機関による実証実験の結果を使い,製品の「効能」を訴えるアカデミック・マーケティングもすっかりおなじみとなった。さらに一歩進めて効果の実証だけでなく,メカニズムまで解明して消費者を納得させようとするメーカーもある。第三者機関と開発段階から共同研究を行い,成果を製品に盛り込むケースも出てきている。