眠い…。でも,そろそろ起きないとな。うーん,テレビでもつけるか。リモコンはベッドの脇に…。あっ,あった。電源ボタンはリモコンの上の方に…あぁ,そういえば新しいリモコンを購入したんだっけ。縦に振ると確か…おー,電源が入った。で,横に振って…便利だなぁ,振るだけでチャンネルが変わるんだから--。

 近い将来,こんなリモコンがデジタル家電に標準で添付されていてもおかしくない。「振る」「傾ける」といった動きを検出するセンサがどんどん安く,そして小さくなり,リモコンなどにも組み込みやすくなるためだ。

 ユーザーの動きを検出して信号に変えるのが「加速度センサ」や「角速度センサ」(ジャイロ)である。加速度センサは物体に加わる加速度の大きさを出力する。縦,横,高さの3方向の加速度を測定できる3軸品なら,3次元空間のあらゆる方向の加速度を測定できる。重力加速度を基準に物体の傾き角を算出したり,各方向の加速度から物体の動きを割り出して,ユーザーの動作を把握したりすることが可能になる。

 一方,ジャイロは物体の回転により生じるコリオリ力を検出することで,角速度の大きさを出力する。従来からビデオ・カメラの手ブレ補正に使われていることはよく知られており,上下左右方向に生じる筐体の傾きを1軸のジャイロを2つ使って検出する。  数年前まで,加速度センサは外形寸法や価格などが制約となり,民生用途ではあまり採用が進んでいなかった。ジャイロは主に前述のビデオ・カメラの手ブレ補正での採用にとどまっていた。

 こうした状況に今,転機が訪れようとしている。