雑誌 特集

トヨタ生産方式

停滞からの脱却

田野倉 力
2005/03/27 19:07
 
日経ものづくり 特集

トヨタ生産方式(Toyota Production System,以下TPS)を採用する企業が増えている。TPS導入とは, 必要なものを必要なだけ必要なときに造ることで 在庫を減らしつつ,顧客の満足する納期を満たし, 品質も高水準を維持するという, メーカーにとって非常に難しい課題への挑戦である。 さらに,TPSを導入した企業は気付き始めている。 生産革新を進めていくと,いずれ生産部門の取り組み だけでは行き詰まることを。(高野 敦)


Part1【現状を打ち破る】
「プッシュ」から「プル」への転換で
実需ベースの生産システムを実現

トヨタ生産方式(TPS)は,生産システムというより考え方に近い。 その根底には,利益を損なう「造り過ぎのムダ」を防ぐ仕掛けが施されている。 この考え方を実現するためのプル生産とは, 流せるところは流し,流せないところは仕掛かりを後工程が引き取ることである。

Part2【使いこなす】 事例1
ブラザー工業
標準化による作業時間統一で 出荷順の1個流し生産を達成

 ブラザー工業は,タッピングセンタの組み立て工程で,同社のラインアップ全8機種のうち7機種を混流生産している。ただし,このラインの特徴は単に混流生産というだけではない。組み立てを16工程に分け,各工程の作業時間をすべての機種でそれぞれ70分に統一したのだ。これにより,完全に出荷順の1個流しラインを実現している。
 それまでも複数の機種を混流生産していたが,プル生産ではなくプッシュ生産でロット数も5と多かった。「顧客にしてみれば5台も要らない。1台で十分」(同社マシナリー・アンド・ソリューションカンパニーエグゼクティブV.P. 兼 戦略技術部長の吉田国光氏)。受注変動によって増えたり減ったりする在庫に業を煮やし,同社はTPSを導入した。

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●16工程を4セルに分割

Part2【使いこなす】 事例2
東北アンリツ
インテリジェントなミズスマシが 混流でのミスを大きく減らす

 アンリツの製造子会社である東北アンリツ(本社福島県郡山市)は,シグナリングテスタやスペクトラム・アナライザといった計測器の一部を,混流ラインで組み立てている。
 ただし,カテゴリの全く異なる製品をまとめて一つのラインで造っているのではない。同一製品群ごとにラインを設けている。これだけならそれほど珍しくない取り組みだが,同社が優れているのは,ラインを流れる製品群の特徴を見極め,その特徴によって2種類の部品補充方式を使い分けていることである。

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●無線機テスタの組み立てライン

Part2【使いこなす】 事例3
キトー
「人づくり」が標準化の効果を高め 任せることが責任意識を育てる

 キトー(本社山梨県中巨摩郡昭和町)は,重量物の運搬に使う電気チェーンブロックの生産にプル生産を適用。3機種,耐荷重や巻き上げ速度の違いを含めると59種類のチェーンブロックを混流ラインで組み立てている。
 混流生産に不可欠な標準化を,同社は「人づくり」の課程で洗練させていった。完璧な標準作業を構築したとしても,それを実践できる作業者を安定して確保できなければ意味がない。多くの企業の例に漏れず,同社でも請負の作業者が増えている。せっかく導入したプル生産の良さを引き出すには,こうした請負作業者の作業レベルを高め,意欲を引き出す仕組みも必要となる。

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●組み立て工程

Part2【使いこなす】 事例4
アドバンテストマニュファクチャリング
実装機を30分刻みで段取り替え、 回路基板の製造を小ロット化

 アドバンテストの製造子会社アドバンテストマニュファクチャリング(本社群馬県邑楽郡邑楽町)では,半導体自動検査装置(ATE)や自動搬送装置(ハンドラ),計測機器のラインに関して,プッシュ生産からプル生産への転換を,2003年8月から進めてきた。その中でも取り組みが進んでいるのはATEの製造ライン。ATEには全部で25機種あるが,1日の生産台数が5~7台という典型的な多品種少量生産製品だ。価格も2000万~4億円と幅が広い。

Part2【使いこなす】 事例5
NECコンピュータテクノ
JIT納入を支援する物流改善、 取引先の改善も助ける

 NECの製造子会社で,主に法人向けのコンピュータを生産するNECコンピュータテクノ(以下NECT,本社山梨県甲府市)は,汎用サーバからスーパーコンピュータに至るまですべての製品のラインで後工程引き取りの考え方を採り入れている。これに伴い,後工程引き取り(JIT納入)に対応するサプライヤーの開拓も進めてきた。当初は皆無だったJIT納入比率は,取引先全体の約8割程度に増えている。

Part2【使いこなす】 事例6
FDK
電子部品の製造で後工程引き取り、 サプライーとしての競争力が向

 FDKの湖西工場で造っている製品は,スイッチング電源,インバータユニット,マイクロインダクタなど,単体では機能しない部品やモジュール。マンガン乾電池のメーカーとして設立され,今も1次電池を造り続ける同社だが,主力事業は電子部品・モジュールである。

Part3【未来を切り開く】
生産革新が進むにつれ
部門の枠を超えた連係が重要に

トヨタ生産方式(TPS)を導入した企業は気付き始めている。 生産革新は生産部門の力だけではなし得ないことに。 現場からフィードバックされた課題を各部門が個別に解決するのではなく, 設計や購買などの部門が常に連携し,問題を未然に防ぐフィードフォワードこそが理想だ。

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