日経ものづくり 中国的秘密・日本的秘策

大氾濫するコピーソフト
いつの間にやら「加害者」に

模倣が簡単な上,正規版よりもはるかに低価格なコピーソフトが中国にまん延している。中国メーカーでは,高額なCADソフトは買えないという理由で平気でコピーCADソフトを使っている始末。ある中国メーカーの工場も例に漏れず,コピーソフトが続々と見つかる。入手先を調べるとさらに驚きの結果が。(本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


 中国に氾濫するコピー商品の中でも最も悪質なものの一つがソフトウエアです。ハードウエアは模倣する際にそれなりの設備を用意し,それなりの品質管理をするなど,ある程度まとまった費用が必要となりますが,ソフトとなると話は別。元手は,オリジナルの製品(真正品)とそれをコピーするパソコンや周辺機器だけ。日本円に換算し,わずか数万円でコピー商品を造れるのです。言ってみれば,誰でも簡単にコピー商品づくりに手を染めることができます。その分,被害は深刻度を増しています。

日本メーカーの“悲哀”
 日本において,ある大手メーカーの開発部へ行った時のこと。その開発部の棚に全く同じソフトの箱が何十箱も並んでいる様子が目に付きました。妙にきれいに陳列されている様子が気になった私は,その開発部員に対し,なぜわざわざそんなことをしているのか尋ねました。すると,彼はこう返したのです。
「実はコンピュータを導入し始めたころは,色々なソフトを部課単位で1個だけ購入し,それをコピーして使っていました。しかし,あるソフトメーカーから警告文が届き,それ以降は社内で規定を作ってすべてのソフトについてライセンスを徹底管理するようにしたのです」
 彼は少しため息をつきながら,こうも漏らしていました。
「小さな会社なら少しぐらいソフトをコピーしても,ソフト会社は黙認してしまうのでしょう。でも大企業の場合は数が多いからそうはいかないのでしょうね」

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