携帯電話事業者は,通信・放送の両インフラを使って「映像を見るケータイ」の普及を図り,機器メーカーはその動きを後押しする。「まずは高速の通信ネットワークを使って映像配信サービスを提供し,携帯電話機で映像を見るという下地をつくる。それを足掛かりに,地上デジタル放送サービスへの対応を始めたい」(スウェーデンEricsson社 Senior Vice President and General Manager,Research and DevelopmentでChief Technology OfficerのHåkan Eriksson氏)。
映像対応の機種は,2005年を境に一気に増えそうだ。中心となるのは,地上デジタル放送を受信する機能を持つ携帯電話機である。例えばフィンランドNokia Corp.は同社ブースで,地上デジタル放送対応の携帯電話機を実演しながら「テレビ放送受信機能はさらに多くの携帯電話機で搭載されていく」(ブースの担当者)と訴えた。米Motorola,Inc.も「ユーザーが求めているものを提供するのは当然のこと。今回は見せられないが,テレビ視聴ができる携帯電話機は2005年内には用意する」(同社 Personal Devices Business,PresidentのRon Garriques氏)と積極的な姿勢を示した。2006年にはドイツでサッカーのワールドカップが開催されることになっており「ワールドカップを外出先でも見られるようにする」(オランダPhilips Semiconductors社 Busi-ness Development TV on MobileのKees Joosse氏)が合言葉になっていた。
ここ数年,携帯電話業界では,軽量化やインターネット対応,決済機能などに関して日本の市場が突出した。その時間差は「3年くらいあるだろう」(英Toshiba Electronics Europe GMBHの担当者)といわれてきた。ところが,今回の3GSM World Congress 2005を見る限り,動画や音声を手軽に楽しめる高速通信サービスの提供やデジタル放送への対応は,日本とほぼ同時期に始められそうだ。