特報
塑性加工で一気に完成品を供給

後工程の要らない精度を実現し量産ラインの姿を変える


アイシン精機生産技術部塑性加工グループ 萩田雅俊


量産において塑性加工が受け持つ精度の範囲は50μmより粗い。
この常識をアイシン精機は打ち破った。
プレス成形と冷間鍛造を複合させたプレス鍛造成形を究めることで,
ABSの部品など20μmより厳しい精度を要求される加工品にも塑性加工を用いている。
国際市場で勝ち残るためのカギを握る同技術の詳細を,同社の技術者が明らかにする(本誌)。


 プレスや鍛造に代表される塑性加工は,材料の無駄が少なく加工速度が速いため,ほかの加工方法に比べてコスト面で有利である。一方で,材料を変形させるため,微細形状を除去する切削加工と比較すると,加工後の寸法精度は一段階落ちる。
 従来,アイシン精機では,量産において塑性加工で実現できる寸法精度は,おおよそ50μmまでだった(図1)。従って,それ以上に厳しい寸法精度を要求するような部品に関しては,他の加工方法を用いるか,または塑性加工後に切削や研削などで仕上げる必要があった。
 自動車における主要機構部品の約70%が塑性加工品だといわれている。国際競争の激化や自動車ユニット部品の低コスト化が続く中,自動車部品メーカーとして生き残るためには,塑性加工の寸法精度を向上させることが,有効な策の一つとなる。
 そこでアイシン精機では,これまでの常識を打ち破り,寸法精度20μm以下の製品についても塑性加工で量産できる技術を開発した。プレスと鍛造の複合であるプレス鍛造を究めることにより,切削加工レベルの精度を実現。これにより,後加工なしに実際の製品に搭載できる塑性加工品の種類を大幅に増やすことに成功した。以下に,今回開発した「精密プレス鍛造」の概要を述べる。