我々は,有機半導体を用いたシート型スキャナを試作し,原理実験に成功した。現在市販されているスキャナのほとんどは,光センサを一直線上に並べた1次元アレイを,被写体となる物体の上から下まで機械的に動かして,文字や絵などの画像データをコンピュータに読み込んでいる。それに対して今回は,複数の光センサを2次元状に並べ,機械的にスキャンする代わりに,有機トランジスタで電子的にスキャンして画像を取り込む方式を採用した。この結果,薄くて軽いスキャナを実現できた。
今回のシート型スキャナのもう1つの特徴は曲げられる点である。フィルム状のプラスチック基板上に回路を作製しているからだ。このため,例えば,丸めてポケットにしまい,そのまま持ち運ぶことができる。また,これまでスキャンが難しかった曲面状の被写体にも密着するため,正しく撮像できる。例えば,ワインのラベルをはがさずにボトルに付いたままスキャンするなど,ユニークな使い方に広げられそうだ。