特報
実証段階に入る 携帯機器向け燃料電池

「2倍」になれば実用化が加速か

目指すは2007年---携帯機器向け電源としての燃料電池の基本性能が高まってきたことで,その実用性の検証を始める企業が増えてきた。携帯電話機に至っては,燃料電池メーカーだけでなく通信事業者が燃料電池の開発に積極的にかかわってきている。携帯機器の開発側が求めるのは,まずは「現状のリチウムイオン2次電池と同じ大きさで2倍の容量」「試作したものと同一性能で半分の大きさ」。どうやら単位体積当たりの性能で,現状の「2倍」がキーワードになりそうだ。

 単位体積当たりの電池容量(体積エネルギ密度)と単位質量当たりの電池容量(質量エネルギ密度)が,理論上では現状のリチウム(Li)イオン2次電池をはるかにしのぐとされる携帯機器向けの燃料電池。だが現実には,体積エネルギ密度でLiイオン2次電池に追い付くものはなかなか出てこなかった。それが,ここ2年ほどで変わりつつある。

DMFCで420Wh/Lのものも
 現在,携帯機器向けの燃料電池として期待されているのが,メタノールを燃料極に供給して発電するダイレクト・メタノール方式の燃料電池(DMFC)と,水素を燃料極に供給して発電する高分子固体電解質型燃料電池(PEFC)である。DMFCでは東芝が,99.5質量%以上と高濃度のメタノールを希釈せずに使うことで,体積エネルギ密度を現状のLiイオン2次電池並み,質量エネルギ密度を同約2倍に向上させた。PEFCではカシオ計算機が,メタノールと水から水素を作り出す改質器をMEMS(MicroElectro Mechanical System)の技術を応用して小型化し,体積エネルギ密度を「(2004年4月の時点での)Liイオン2次電池の約3倍」(同社)に高めている。