緊急レポート
安全なハブはどこにあるのか

三菱ふそう,ハブの強度不足で再びリコール

2004年3月の大量リコール以来,三菱ふそうトラック・バスはハブの新しい安全基準を模索してきた。その新基準に照らすと,これまで安全と判断していた「F型」フロントハブも一部車種で強度が足りないことが判明。同年12月に追加のリコールを実施した。独自入手した資料を基に,安全だったはずのF型と新しい安全基準を検証する。

 昨日までは安全だったはずのフロントハブが一転して強度不足に—。2004年11月,三菱ふそうトラック・バス(本社東京)は新しく策定したハブの安全基準を発表した。この新基準では,これまで安全と判断していた「F型」フロントハブが一部の車種で強度不足となり,同社は該当する約1万9500台の大型車を同年12月にリコールした。

 ハブとは,車軸とホイールを連結するための部品。同社のハブは鋳鉄製で,円筒部とフランジ部からなる。円筒部の中空部分で軸受を介して車軸と,フランジ部でホイールおよびブレーキドラムと接続する。フロントハブは前輪に使っているハブを指す。

 そのフロントハブで最も応力が集中するのは,円筒部とフランジ部の付け根だ。強度不足のフロントハブは,走行中にブレーキドラム側の付け根に亀裂が発生する。さらに走行を続けると,この亀裂がホイール側に進展し,最後は円筒部とフランジ部が破断し分離する。

 同社がフロントハブの強度不足で,約11万2000台という大量のリコールを国土交通省に届け出たのは2004年3月のこと。1992年6月に東京で起きた事故を皮切りに,大型車のフロントハブが破断し前輪が脱落する事故が相次いだ。そして2002年1月には横浜市を走行中のトラクタから脱落したタイヤが近くを歩いていた母子3人を直撃し,母親が死亡する事故が起きた。この死傷事故をきっかけに警察の捜査が進み,同社はフロントハブの設計ミスをついに認めたのだ。

 2004年3月のリコールで強度不足が判明したフロントハブは「A~E型」なので,今回のF型に関するリコールは追加という位置付けとなる。